宣長

社会と個性

山本七平「現人神の創作者たち」を読んでいる。 日本の現代の思想状況を批評しながら、尊王思想の源流を江戸時代にたどった本である。 そのなかに、山崎闇斎の高弟であった佐藤直方の言葉を引用した部分がある。その言葉が、実に身も蓋もないものなのである。…

袖を濡らす

それから (新潮文庫)作者: 夏目漱石出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1985/09/15メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 280回この商品を含むブログ (143件) を見る本居宣長〈上〉 (新潮文庫)作者: 小林秀雄出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1992/05/29メディア: …

オリエンタリズム

先日、テレビで「ラスト・サムライ」を見た。 トム・クルーズが演じる主人公のネイサン・オールグレンは、南北戦争の英雄だが、その後、ネイティブ・アメリカンとの戦争を通じて彼らの勇敢さを尊敬するようになったが、それにもかかわらず彼らを虐殺したこと…

萌芽と先駆

小林秀雄「考えるヒント2」(文春文庫 ISBN:4167107023)は、軽い題名に比して、内容は濃くて読み応えがある。江戸時代の思想をめぐる考察がテーマとなっている。 最近、小林秀雄を読み始めたのは、本居宣長に興味を持ったからだ。宣長に興味を持ったのは、…

「みづからの事」と「他のうへの事」

ダイエットに入る直前、お菓子づくりをはじめていた。しかし、お菓子に入れるバターと砂糖の量を考えると、ダイエット中のいまはとてもつくる気にならない。けれど、無性に、粉をこねたくなったので、お菓子の代わりにパンをつくることにした。 さっそく初心…

近代化と伝統の再編成

ここのところ、「伝統」とはなにか、ということについて考えつつ、本を読んでいる。 今の私は、「伝統」についてこんな仮説を持っている。 「伝統」が「伝統」として認められるためには、実際に古くより伝えられたものである必要はなく、伝えられたものとい…

近代化

学生時代に読んだ柄谷行人「日本近代文学の起源」(講談社学芸文庫 isbn:4061960180)を引っぱりだして読み返している。 ところどころ、ページの端が折ってあったり、線が引いてあったりしている。今、読んでいると、その当時、線を引いている理由はだいたい…

天皇という人間

しばらく前、「天皇を巡る伝統と変化」というタイトルで日記を書いたら(id:yagian:20060323:1143098847)、こんなコメントの書き込みがあった。 まず、皇太子夫婦が一般家庭を望まれるのなら皇室を出るべきだと思います。 日本の伝統を守り続ける責務が個人と…

もののあわれ

稲本のウェブログの「頭の中の写真」という記事(id:yinamoto:20060404)のなかで、こんなことが書いてあった。 人についてもそうだが、愛情というのは、必ずしも相手が優秀だとか、利点があるから抱くものではない。 まったくその通りだと思う。 昨日、映画「…

目のくもり

小林秀雄「本居宣長」(新潮文庫 ISBN:4101007063)を少しずつ読み進めているけれど、正直にいって、難しくてよく分からないところが多い。理解するには、本居宣長やその前後の思想史について予備知識が必要のように思い、平行して、入門書も読むことにした。…

「日の名残り」と「もののあわれを知るこころ」

<注意>今日の日記には、小説、映画「日の名残り」の内容について書かれています。大学のとき、イギリス人の先生が担当していた現代イギリス小説のアンソロジーを読むクラスをとった。クラスで取りあげたアンソロジーのなかに、カズオ・イシグロの短編小説…

率直さ

高浜虚子、正宗白鳥、志賀直哉といった人たちの文章を読んでいると、身も蓋もない率直な書きぶりに、あっけにとられつつも、感動することがある。自分もこんな風に率直でありたいと思いながらも、人間関係のことなど小心に考えてしまい、なかなか率直ではい…

懐疑主義と主観主義

しばらく前、近代化と国学の関係が気になると書いた(id:yagian:20060315:1142423286)。その参考になると思い、加藤周一「日本文学史序説」(ちくま学芸文庫 isbn:4480084878)を読み返している。国学のことを書いた部分ではなく違ったところに、印象に残る文章…