時事

野田総理大臣の撤退戦

私はリバタリアンなので、日本国内では(おそらく世界的に見ても)政治的なマイノリティだと思う。日本にはリバタリアンを代表する政党はないので、選挙で投票する時は毎回苦慮するし、多くの場合は投票した候補者は落選し、政党は議席数を大きく減らす。 こ…

理想主義と現実主義:アメリカ大統領選挙

今回も英語版ウェブログ(http://t.co/1HMtpZn6)の邦訳です(最近そればっかですなぁ)。 オバマが大統領選挙に勝った。「オバマ大統領とミット・ロムニー」というエントリーで「日本人の観点からは、オバマ大統領はアメリカ人に過小評価されている」と書いたこ…

尖閣諸島紛争の意味と中国のインターネット事情

中国の反日デモも急速に収束したようだ。あれだけ急速に収束してしまうと、かえって政府のデモをコントロールしているという事実が顕になってしまうが、中国政府としてはそれで良いのだろうか。それとも、それぐらいコントロールできるという実力を誇示した…

"The Internet"と「网络」と「インターネット」

TED(http://www.ted.com/)のPodcastを聴きながら通勤することがある。この前、TEDで"Michael Anti: Behind the Great Firewall of China"(http://goo.gl/hGGux)という中国におけるインターネットについてのスピーチを聞いた。 スピーカーのMichael Antiは、…

オリンピックにふさわしい競技とは

柔道を見るのは嫌いではないけれど、さすがにそればかりが放送されているテレビのオリンピック中継やスポーツニュースにはいささか食傷してきた。 NHKのウェブサイトでは、ネットで生中継している(http://www1.nhk.or.jp/olympic/live/)が、なかなか画期的な…

日本軍の失敗と日本の失敗

「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」を久しぶりに読み返してみた。 ほとんど内容を忘れていたが、思ったより読みやすい本だった。よみやすい分、逆に言えば、ケーススタディは浅く、分析も図式的という印象も受けた。しかし、この本で指摘されている日本軍…

継承すべき伝統とは

川田順造「江戸=東京の下町から 生きられた記憶への旅」を読んだ。 川田順造は、戦前の深川に生まれ育ち、この本のなかでも彼が行なってきた深川のフィールドワークの結果が収録されている。それを読むと、川田順造は、東京は江戸との連続性が破壊されてい…

鏡としてのオウム真理教

昨日、NHKスペシャル「オウム真理教」(http://goo.gl/p6qGX)の前半を見た。オウム真理教は、けっして特殊な存在ではなく、国家や宗教のグロテクスな縮図であり、彼らのことを考えることが国家や宗教を考えることに繋がると思う。 カルトが日本社会を破壊し自…

国家資本主義と自由市場資本主義

しばらく前、「民主制、官僚制、市場機構」(id:yagian:20120515:1337054347)というエントリーを書いた。 なんども繰り返して書いているけれど、3.11以来、原子力発電システムのような巨大システムをどのようにコントロールすべきか、また、民主的な国民国家…

電力自由化と停電リスク

現在、すべての原子力発電所の稼働が停止している。関西電力圏内を中心に夏季のピーク時期には電力不足が懸念されているが、現時点では停電が起きている訳ではない。 世界的に見れば、電力需要の増加に発電施設の増設が追いつかなかったり、送発電施設の更新…

「マニフェスト」は意味があるのか

昨日のエントリー(id:yagian:20120515:1337054347)で、民主的な国民国家における民主制、官僚制、市場機構の関係について考えてみた。 以前から「マニフェスト」には大いに疑問を感じていたのだが、三つの構成要素の役割分担を考えることで、「マニフェスト…

民主制、官僚制、市場機構

福島第一原子力発電所の事故以来、原子力発電のような危険性もはらんだ巨大システムを制御しうる制度はありうるのだろうか、という疑問を持ち、民主制を中心として国家制度に関係する古典的な書籍を読んできた。 今回は、マックス・ウェーバー「権力と支配」…

地方「自治体」じゃないのかね

昨日、NHKを見ていたら、こんなニュースが放送されていた(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120511/k10015061661000.html)。 内容をかいつまんで説明すると、東日本大震災の被災者がアパートなどを借りて入居した場合、申請すれば「みなし仮設住宅」として…

ゲームのおもしろさがわからない

消費者庁が、「ガチャコンプ」に対して禁止要請を出し、これに対してソーシャルゲーム大手企業が「ガチャコンプ」を自粛することになった。 結局、「ガチャコンプ」はいつでもどこでもできるパチスロのようなものだから、なんらかの形で規制が入るのが当然だ…

常識的に考えてみようよ

大飯原子力発電所の再稼働問題についての報道などを見ていると、極論、暴論が多すぎてうんざりする。もう少し常識的にふつうに考えられる人はいないのか、と思ったりする。 まず、エネルギー問題、原子力発電問題については、コストやリスクを伴わない夢のよ…

天皇制民営化論

前回の日記(id:yagian:20120506:1336255010)ではFacebookの宗教欄に書いたけれど、今回は政治的な主義の項目(http://www.facebook.com/yagian/info)をきっかけに書いてみたい。 このウェブログにもしばしば書いているけれど、私の政治的な信条はハイエクに近…

「石橋湛山評論集」を読んで

「石橋湛山評論集」を読んだ。 大正から戦後にかけての彼の評論が収録されている。改めて書くこともないが、確かに石橋湛山の主張は大正期から戦後まで一貫している。 大正時代から、彼は一貫して朝鮮、台湾、満州の植民地を放棄すべきとの小日本主義を主張…

日本と保守主義

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以来、民主主義ということについて断続的に考えている。その一環として、エドマンド・バーク「フランス革命の省察」を読んだ。今日はその感想について書きたいと思う。 これも以前から何回か書いているけれど、私の…

竹森俊平「国策民営の罠」

竹森俊平「国策民営の罠」を読んだ。 竹森俊平は「世界デフレは三度来る」を読んで以来(id:yagian:20080917:1221647196)、まっとうな学者だなと思い、基本的には信頼している。この「国策民営の罠」は、福島第一原子力発電所の事故に際して、なぜこのような…

今も昔も

太平洋戦争で日本が無差別爆撃された理由を知りたくてAmazonから何冊か本を取り寄せた。そのうちの一冊のジョン・ダワー「容赦なき戦争」を読み終わった。正直に言って、重い気持ちになった。 この本で、ジョン・ダワーは太平洋戦争を「人種差別」という観点…

暗い話を聞きたいが 笑って聞いていいのかな

以前もこのテーマについて書いたことがあるけれど、うつ病の人に「がんばれ」と言ってはいけないとよく聞く。 うつ病者としての私の立場から言えば、「がんばれ」という言葉をかけてくれる人は元気づけようを思って言ってくれているということはよくわかるか…

「市場の倫理 統治の倫理」

1. ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」 ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」を読了した。 3.11以降、民主主義について考えて続けているけれど、いろいろと示唆に富む内容だった。 この本のエッセンスを強引に要約するとこんな風…

「市場原理主義」と日本

最近、仕事が忙しくてなかなかウェブログを更新することができない。 昨日の金曜日の夜、久しぶりに大学時代の友人と飲み、カラオケに行き、午前様になった。「午前中」はゴロゴロと寝て過ごし、午後は久しぶりにまとまった時間、集中して本を読んでいた。そ…

ブラック・スワン、リーマン・ショック、福島第一原子力発電所事故

今日のテーマの「ブラック・スワン」といっても映画の方ではなく、きわめて稀に起こる事象の方である。 かつて「金融工学」が非常に話題を集めた時期があった。リーマン・ショック以降あまりこの言葉を耳にしない。もちろん、話題にならないということだけで…

自民党政権下の逆説明責任体制

斉藤淳「自民党長期政権の政治経済学 利益誘導政治の自己矛盾」を読んだ。 斉藤淳は、衆議院補欠選挙に民主党から立候補し、一年間だけ国会議員を務め、その後の選挙で落選した。もともとは政治学の研究者であり、現在、イェール大学の政治学の助教授である…

哲学なき国:「一身独立して一国独立すること」

最近、不眠症が治ったのか、早朝に目がさめることがなくなった。いままで早朝にウェブログを書いていたけれど、それができなくなったので、なかなか更新がままならなくなってきた。週末に更新するのが精一杯かも。 さて、いま、明治初期の自由民権運動から戦…

SOPA反対

Lang8の知り合いがSOPAへの反対の輪を広げたいというという投稿をした。日本ではあまり関心が高くないけれど、私も反対なのでこの投稿の翻訳を転載しようと思う(http://goo.gl/aRjo8)。 これはマジな問題なんだ。18日か24日(どっちかだったかよくわらかない…

結局「ロリ」か「ヨサコイ」

地上波のテレビがあまりにつまらないので、最近はもっぱらNHK-BSで海外のニュース、ドキュメンタリー、スポーツ、ネイチャー番組を見ている。しかし、NHK-BSでも見るべき番組を放送してないときもある。そんな訳で、スカパー!HDと契約することにした。昨日…

反グローバリズムってなんだろう

誰が言っていたのかわすれてしまったけれど、なにかよくわからないことを理解するためには本を書いてみるのがいい、という意味のことを読んだことがある。その人と比較するのはおこがましいけれど、なにかよくわからないことがあったとき、とりあえずウェブ…

2011年を振り返る

大晦日なので、月並みだけれども、今年一年を振り返ってみようと思う。社会、仕事、趣味の三つのテーマで書いてみようと思う。 社会 私にとって、今年の「社会」の領域では、やはり3.11とそれに続く福島第二原子力発電所の事故がいちばんインパクトが大きか…