読書

アメリカの捕鯨と日本の近代化

最近読んだ「リヴァイアサン:アメリカにおける捕鯨の歴史」(Eric Jay Dolin's "Leviathan: The History of Whaling in America.")という本が非常に面白かったので、英語版ウェブログに掲載した感想(http://goo.gl/IdlF5)の和訳を転載したい。また、この作者…

「自由の性質」と「政治におけるリーダーシップへの要望」

これまでドラッカーは読んだことがなかった。読まずになんだかリーダーシップに関するノウハウ集を書いた人という印象を勝手に持っていた。 今、"The Daily Drucker"という本をKindleでぽつぽつ読んでいる。1月1日から12月31日まで毎日一編づつドラッカーの…

ヒップホップと作者の死

今日も英語版のウェブログ"Hip Hop and the Death of the Author"(http://murl.kz/McEyB)の翻訳である。 私は、1970年代はロックの黄金期であり、現在ではロックは死んでいると思っている。そのことは「世界のすべてのバカ男子のための歌」というエントリー…

因果系宇宙に生まれて

私は北区出身ということもあり、清野とおる「東京都北区赤羽」をいまさらながら読んでみた。 清野とおるが冒頭で書いているように、北区は荒川区とならんで東京23区の辺境で、その住民以外は誰も関心を持っていなかった。正確に言えば、清野とおる自身がそう…

近代化と土着性:フラと盆踊り

最近、日本語のウェブログを書く意欲が低下している。今日も、英語版(http://goo.gl/wfQMO)の和訳の転載をする。日本語が固いのは翻訳(自分で書いたのを自分で翻訳しているのだけれども)ため。 また、「マーク・トウェインのハワイ通信」について書こうと…

1866年と2012年のハワイ「マーク・トウェイン―ハワイ通信」

前のエントリーでハワイ旅行について書いたけれど、旅行中に読んだ"Mark Twain's Letters from Hawaii"「マーク・トウェイン―ハワイ通信」という本の感想を英語版のウェブログ(http://goo.gl/E1Fg0)に書いた。その和訳を転載しようと思う。 前回のエントリー…

雪の花嫁の城

リチャード・ブローティガン「東京モンタナ特急」を読んだ。その事情は英語のウェブログ(http://goo.gl/elvwz)に書いたのはここでは省略する。 この本には相互に関連はない掌編が並んでいるのだが、いちばん気に入ったものを翻訳しようと思う(著作権は侵害…

アナキストの夢

以前、「アナキストの悲劇」(id:yagian:20120520:1337500825)というエントリーを書いた。 そこでは、大杉栄に代表されるアナキストの思想には共感するけれども、組織的・統制的・抑圧的なコミュニスト・ボルシェビキには敗れるように運命づけられている。そ…

日本軍の失敗と日本の失敗

「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」を久しぶりに読み返してみた。 ほとんど内容を忘れていたが、思ったより読みやすい本だった。よみやすい分、逆に言えば、ケーススタディは浅く、分析も図式的という印象も受けた。しかし、この本で指摘されている日本軍…

日本人は勤勉だったか

さすがに最近はあまりそのようなことは言われなくなったけれど、かつては「日本人は勤勉だ」というステレオタイプが根強かった。 実際に、高度成長期からバブル期までは就業者の労働時間は他の先進国に比較して長かった。ヨーロッパへの海外出張を計画すると…

継承すべき伝統とは

川田順造「江戸=東京の下町から 生きられた記憶への旅」を読んだ。 川田順造は、戦前の深川に生まれ育ち、この本のなかでも彼が行なってきた深川のフィールドワークの結果が収録されている。それを読むと、川田順造は、東京は江戸との連続性が破壊されてい…

宗教に入信する信者の心理

前回のエントリー(「鏡としてのオウム真理教」(id:yagian:20120527:1338081114))で宗教について書いた。 しかし、私自身は明確な信仰、信心は持っていないので、正直に言えば宗教の信者の心理についてはよくわからない。生まれ育った家族やコミュニティの…

国家資本主義と自由市場資本主義

しばらく前、「民主制、官僚制、市場機構」(id:yagian:20120515:1337054347)というエントリーを書いた。 なんども繰り返して書いているけれど、3.11以来、原子力発電システムのような巨大システムをどのようにコントロールすべきか、また、民主的な国民国家…

アナキストの悲劇

なんとなく音楽を聴く気分になれず、iPhoneの豊平文庫(http://goo.gl/OWSv)というアプリで青空文庫に収録されている大杉栄の評論、随筆を読んでいた。 少々本題から外れるけれど、豊平文庫はなかなかすぐれものである。iPhoneを買う前、青空文庫はもっぱらウ…

「市場の倫理 統治の倫理」

1. ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」 ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」を読了した。 3.11以降、民主主義について考えて続けているけれど、いろいろと示唆に富む内容だった。 この本のエッセンスを強引に要約するとこんな風…

「市場原理主義」と日本

最近、仕事が忙しくてなかなかウェブログを更新することができない。 昨日の金曜日の夜、久しぶりに大学時代の友人と飲み、カラオケに行き、午前様になった。「午前中」はゴロゴロと寝て過ごし、午後は久しぶりにまとまった時間、集中して本を読んでいた。そ…

一見は百聞に如かず(続):石原莞爾「世界最終戦論・戦争史大観」

「一見は百聞に如かず:石原莞爾「世界最終戦論」」(id:yagian:20120225:1330169639)で、石原莞爾の主張が意外とまともであることについて書いた。今日は、具体的に引用をしてみようと思う。 統制は各兵、各部隊に明確なる任務を与え、かつその自由活動を容…

木村政彦はなぜ力道山に敗れたのか

増田俊也「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」読了。701ページ、二段組の大作である(これで2,600円という価格はあまりにも安いと思う)。丹念な取材でこれまで「通説」とされてきた事実を覆す力作で、非常に興味深かった。しかし、一方で、読み進むう…

百聞は一見に如かず:石原莞爾「世界最終戦論」

最近、青空文庫や岩波文庫で戦前の左翼の人たちの本を読んでいたのだが、それでは片手落ちだと思い、戦前の右翼の人の本も読もうと思って石原莞爾を読んでみた。 以前、北一輝「日本改造法案大綱」を読んで、読みにくいなと思った記憶があり、石原莞爾はどん…

「わたしを離さないで」と「1Q84」

本も映画も意欲が亢進して続けざまに読んだり、観たりする時期があり、しばらく手に取らない時期もある。最近は、映画熱が高まっていて、週末にTSUTAYAで2本ほど映画を借りるのが恒例になっている。ここしばらく気にはなっていたものの見逃した映画がたくさ…

ノルウェイの森と続崖の上のポニョ

ノルウェイの森:自殺した親友の精神的に不安定な彼女を抱えた僕の前に魅力的な緑ちゃんが現れた。僕はどうすればよいのか。 続崖の上のポニョ:彼なしでは生きることができないさかなの子供のポニョを抱えた宗介の前に魅力的な緑ちゃんが現れた。宗介はどう…

言語習得のプロセスについて考えてみた

しばらく前に書いた記事「パターン認識、校正、速読術、音読と黙読、ロゴス中心主義、声に出す日本語、黙読における文章のリズム、漢字の認識の限界とは」(id:yagian:20120119:1326972915)とそれについたコメントの続編なので、一応、目を通してもらえるとう…

「坂本龍馬」の虚像と実像

先日、Facebookで会社の知り合いが紹介していたウェブ上のコラム「これからの未来:現代の黒船の到来、あなたは坂本龍馬に憧れますか? --- 谷本 貫造」(http://goo.gl/f4UWJ)を読んでいて、内容にまったく無関係の坂本龍馬が引合に出されていて、これだから…

「学問のすすめ」のすすめ

年末にAUのガラパゴス携帯をiPhoneに買い換えた。 主に使っているのは通勤中だけど、電波が途切れる地下鉄通勤なので十分活用しているとは言えない。 今まで、通勤中はiPod ClassicでPodcastを見るか音楽を聴くかしていたけれど、iPhoneになってPodcastの画…

市場という海に浮かぶ企業という島と市場メカニズムを使ったプロジェクトマネジメントに関する試案

ロナルド・H・コース「企業・市場・法」という本を読んでいる。 内容もいいのだけれども、なんといってもコースという人の問題設定のセンスがすばらしい。市場メカニズムのなかで、なぜ、企業という組織体が存在するのか、という問題について考察している。 …

これがマルキストの生きる道

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「マルチチュード」を読んだ。おもしろかった。 アントニオ・ネグリは、現代において最大の影響力を持っているマルキストだと思う。私自身は、ハイエクに共感する保守主義者だけれども、マルクスは19世紀最大の思想家…

悲しき南洋

最近、よく眠れるのは健康上いいことだけれども、いつも早朝にウェブログを書いているので、なかなか新しい記事を書くことができない。 英語版(http://goo.gl/J3DhM)と日本語版を交互に書いていることにしている。最近ではずいぶん慣れてきたけれど、それで…

ミツバチと保守主義とピースミールエンジニアリング

ローワン・ジェイコブセン「ハチはなぜ大量死したのか」を読んだ。 この本は、アメリカで発生したミツバチが大量に失踪してしまう蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)の原因を追求したサイエンス・ノンフィクションである。 日本でも、ミツバチ…

ヒップホップを楽しむことはできるのか

大和田俊之、長谷川町蔵「文化系のためのヒップホップ入門」を読んだ。 そもそも、ヒップホップに入門しようと思って本を読んでいる時点でダメダメなんだけど… この本は、アメリカ文学者の大和田俊之とヒップホップライターの長谷川町蔵の対談形式で進んでい…

三人のカール、カール・マルクス、カール・マンハイム、カール・ポパー

最近、カール・マンハイム「イデオロギーとユートピア」、カール・ポパー「歴史主義の貧困」を読んだ。マンハイムは知識社会学の祖として、ポパーはハイエクの盟友として、また、まっとうな保守主義者として共感している。しかし、困ったことに(別に、ほん…