雑感

原子力発電所の再稼働に関する思考実験

今日も実現可能性の乏しい極論を書く。おそらく実現はしないと思うけれど、論点を明確にする効果があると考えている。 今日の主題は原子力発電所の再稼働をどのように決定すべきか、という問題である。 私の答えは、放射性廃棄物の最終処分、重大事故発生時…

「負け犬」のための民主主義

選挙が近づくと投票を呼びかける広報を見かける。 確かに投票をすることは重要なことだけど、私の場合は虚しさも感じる。 都知事選挙は、選挙権を得てから一回も当選した候補に投票したことがない。今回も有力候補に都知事としての魅力をまるで感じないから…

佐幕派改め共和主義者の改憲論

「佐幕派の「維新レジームからの脱却」論」(id:yagian:20140114:1389648498)にも書いたように、呉智英「封建主義者かく語りき」を意識しつつ「佐幕派」を称していくつかの極論を書いてきた。舞台裏を明かすのは野暮だけど、「佐幕派」という少数派の極端な立…

「あふれる"ポエム"」「パワースポットブーム」「前向きソング」

NHK「クローズアップ現代」で「あふれる“ポエム”?! 〜不透明な社会を覆うやさしいコトバ〜」(http://goo.gl/qsq5O3)という特集を見た。 このなかで取り上げられていた「居酒屋甲子園」というイベントや、やけに「前向き」な居酒屋に対して、Internet上で違…

佐幕派の「維新レジームからの脱却」論

呉智英のデビュー作に「封建主義者かく語りき」という本がある。戦後民主主義を「封建主義」(主として論語)の立場から批判したものである。 もちろん呉智英は半分冗談なのだけれども、半分は本気である。その気持はよく分かる。日本の戦後民主主義は確かに…

"Bandit(匪賊)"としてのAl-Qaeda

Eric Hobsbawm "Bandits" (エリック・ホブズボーム「匪賊の社会史」)を読み返した。 Eric Hobsbawmは、イギリスのマルクス主義歴史学者で、"The Invention of Tradition" (「創られた伝統」ちなにみ、kindleで廉価版が発売されているので、一読することをお…

道徳的な福祉:ObamaCare反対論への誤解

Americaには、根強いObamaCare反対論がある。この反対論は、きわめてAmerica的な現象であるため、反対論の根拠について誤解があるように思う。 日本におけるObamaCare反対論者のstereotypeは、創造説を信奉している頑迷なTea Party Movementの支持者か、Wall…

「善き市民」の哲学:Michael Sandel「公共哲学」

Michael Sandel「公共哲学」を読んだ。 これまでも「リベラリズムと正義の限界」を含め彼の本は何冊か読んでいたのだが、彼の主張が腑に落ちなかった。この本は、Michael Sandelの時事的な論説が集められており、体系的な著作よりもむしろどのような文脈、背…

佐幕派の靖国嫌い

私は靖国神社が嫌いだ、佐幕派だから。 靖国神社のwebsiteに次のように書かれている(http://www.yasukuni.or.jp/history/detail.html)。 靖国神社の起源は明治2年(1869)6月29日に建てられた東京招魂社に遡ります… … …国内に避けることのできない不幸な戦い…

安倍晋三のいつかきた道

このところの安倍晋三首相を見ていると、第一次安倍内閣がたどった道に戻ってきたと感じている。 安倍晋三の信念は一貫していて「ブレて」いない。彼は、彼の考える日本の自立を目指し、憲法の改正、教育の改革、軍事力の強化を実現しようとしている。 第一…

こいつらは「本読み」の味方ではない

「対アマゾン、電子書籍で連携 書店や楽天など13社、めざせ「ジャパゾン」」(http://goo.gl/b2KkGK)という記事を読み、心の底からあきれ果てた。 書店の店頭に電子書籍の作品カードを並べ、店頭で決済。購入した人は、その作品カードに書いてある番号をも…

経営学と社会科学

最近、入山章栄「世界の経営学者はいま何を考えているのか」と三谷宏治「経営戦略全史」という本を読んだ。 前者はAmericaのAcademiaで活動している経営学者が現代の英語圏の経営学会で取り上げられている研究課題の見取り図を示したものであり、後者はconsu…

「カタカナ語」追放運動

最近の記事では、なるべく外来語のカタカナ表記を使わず、なるべく原語で表記することにしている。慣れないと読みにくいかもしれない。 外国語の単語を日本語に取り入れて表現の幅を広げたいという気持ちはよくわかる。なるべく外来語は使わずに書くべしと主…

抑圧される人と抑圧する人の解放:Nelson Mandelaと「深いcommunication」

しばらく前、社内で事業部門の人たちと顧客満足度を高める方法について議論をした。 相手の業界によっては、外注先(ここでは私の会社)の社員を日常的に怒鳴ることもあり、社員の「ストレス耐性」を高めることが必要だという意見がでた。 私の会社の社員は…

真善美:芥川龍之介と菊池寛と私(2)

前回の記事(id:yagian:20131208:1386450690)では、もともとは好きではなかった菊池寛「恩讐の彼方に」を久しぶりに読んだら、不覚にも感動してしまったことを書いた。 青空文庫に、芥川龍之介が菊池寛の作品を、また、菊池寛が芥川龍之介の作品を批評してい…

芥川龍之介と菊池寛と私

最近、ちょっとしたすきま時間に、青空文庫で芥川龍之介の作品をiPhoneで読んでいる。短編小説も随筆も短いので、地下鉄に乗って降りるまでの時間でひとつの作品が読めてしまうのでちょうどいい。 芥川の作品が手放しで好きだ、という訳ではないけれど、彼自…

悪趣味な日本の私

日本のwebsiteのdesignに関する記事をいくつかinternetで見かけた。確かに、英語圏のwebsiteに比べ、良きにつけ悪しきにつけ独特だと思う。 代表的なwebsiteを二つほど比較してみよう。 Yahoo!Japan (http://www.yahoo.co.jp/) / Yahoo! (http://www.yahoo.c…

やぱっり「アーティスト」「エコノミスト」という言葉は嫌いだ

自分でもよく理由が説明できないのだが、どうしても気になってしかたがないツボのようなものがある。 稲本(id:yinamoto:20131123)は、「民衆」とか「日本人」とか、大雑把に人をくくる言葉を自覚なく使うことが気になるらしく、よくそのことについてblogに書…

真の日本人の証明

9月の末から扁桃腺炎の影響があって体調が優れず、blogもご無沙汰してしまった。 扁桃腺炎で発熱しているときは、暇といえば暇である。微熱であれば本を読んでいるが、熱が上がると本を読む元気がなくなる。そんな時はTVをザッピングしていた。と言っても、…

Americaから見た太平洋戦争

最近、大正から昭和初期にかけての政治史に関する本を何冊か読んだ。 日本が対米開戦に至る経緯について新知見があった訳ではないけれど、自分なりに整理ができたような気がする。 重要な点をまとめると次のようになるだろう。 明治憲法は権力を分散させるよ…

東京の育ちの書生、芥川龍之介と私

最近、紙の本をあまり持ち歩かないようになった。 外出先で暇を潰す時、Kindleで本を読むか、iPhoneのアプリで青空文庫を読んでいることが多い。このところ、青空文庫で芥川龍之介の小説や随筆を眺めている。 芥川は、東京生まれ東京育ちで、私の実家の近所…

East Asiaにおける日米安全保障条約の存在価値

日本における日米安保条約に関する議論は、沖縄における基地負担、集団的自衛権の是非、実際に紛争が発生したときに米軍が介入するか、といった論点が中心である。 やや視点を変えて、East Asia諸国から見た日米安全保障条約の存在価値について考えてみたい…

"YOSAKOI"国日本

英語版のWeblogに、日本文化は「茶道」「禅」「浮世絵」「寿司」「オタク」だけではなく、「ヤンキー文化」(ないし"YOSAKOI")という世界が、実は主流の文化だということを紹介したことがあった。"Yanki and YOSAKOI: the Real Dominant Culture in Rural J…

南場智子「不格好経営」

最近、中間管理職をやっていることもあり、仕事の体験談が書かれた自己啓発系の本を読んで「そうだよなぁ」とか「すごいなぁ」とか「オレもまだまだ」などと思う典型的な中年「サラリーマン」になっている。 DeNAの創業者南場智子の本「不格好経営」を読み、…

The US Marine Corpsと橋下市長

野中郁次郎「アメリカ海兵隊」を読み、橋下市長の従軍慰安婦に関する発言について考えてみた。 ここでは、橋下市長が米軍普天間飛行場の司令官に「合法的に性的なエネルギーを解消できる場所が日本にはある。真っ正面から風俗業を活用してもらわないと、海兵…

PMO(Project Management Office)という仕事

今、会社でPMO(Project Management Office)という部署で仕事をしている。 私たちの会社がお客様に提供している仕事のほとんどは、projectという形態をとっている。PMOという部署のmissionは、projectが成功するための支援をすることである。 正直に言って、…

憲法改正は必要か?

昨日は憲法記念日だったので、mass mediaやinternet上で憲法改正に関する記事をいくつか目にした。一日遅れになってしまったが、感想を書いてみたい。 私は「教条的」な護憲論者でもないし、かといって積極的な憲法改正論者でもない。憲法の改正が必要なら改…

「ボストンへ、ランナーを名乗る世界の一市民から」

村上春樹がニューヨーカーにボストンマラソンに関するエッセイを投稿していた。 "BOSTON, FROM ONE CITIZEN OF THE WORLD WHO CALLS HIMSELF A RUNNER" May 3, 2013, posted by Haruki Murakami (http://goo.gl/aT5l8) もともとは日本語で書かれたものを英訳…

陰謀論者とBuddha

昨日のentry「WTO脱退論?」(id:yagian:20130427:1367007188)で「アメリカ陰謀論者」について触れた。今日は、陰謀論とはなにか考えてみようと思う。 「陰謀論」には事実の裏付けはなく、それを信じていない人から見ると荒唐無稽に見えることが多い。「陰謀…

WTO脱退論?

昨日のエントリー「ミナサン、減税はおキライですか?」(id:yagian:20130426:1366927946)で、TPP交渉への参加の是非について基本的な考え方を整理してみた。今日はその補足をしたいと思う。 TPPに参加することは日本の主権の重大な部分を譲り渡すことになる…