オオルリ

朝、つれあいと、緑があるところに行きたいという話をした。それだったら、ということで、明日から行くつもりだった軽井沢にある母親の別荘に、一日予定をくりあげて行くことにした。
長野新幹線の自由席に乗った。東京駅のホームも、列車の中も、混沌としていた。ピークの時期の新幹線に乗る、ということは、ずいぶん久しぶりである。子供の頃の家族旅行の雰囲気を思い出して懐かしかった。昔は、鉄道の輸送能力も乏しかったのか、いつも人があふれていたように思う。
軽井沢に着き、野鳥の森に行った。双眼鏡と鳥類図鑑を借りて、鳥のさえずりを聴きながら歩いた。
野鳥の森を歩いている人の大部分は、バードウォッチャーのようだった。双眼鏡を持っていたため、こちらもバードウォッチャーのように見えたらしい。鳥のさえずる方角に双眼鏡を向けていると、「見えますか、幹のどちら側ですか」などとひそひそと声をかけられた。バードウォッチャーの秘密結社に入会したようで、おもしろかった。
といっても、実際には、鳥のことはよく知らない。今日は、鳥をたくさん見ることができたのか、たいして見ることができなかったのかもわからない。ただ、オオルリという背が青い鳥を見ることができた。一緒にながめてにたバードウォッチャーたちがうれしそうに見ていたから、それなりに見る価値がある鳥とされているのだろう。じっさい、色があざやかで、きれいだった。
バードウォッチングは、ダイビングに似ている。鳥にしろ、魚にしろ、人間と直接関係を持たない。鳥や魚は、自分たちの世界で生きており、人間は、その世界の隅にそっといて、じっと観察しているだけである。そういう動物との関係の持ち方は心地よい。