ヘッドスライディング

オリンピックの日本対台湾戦を見た。
野球は、オリンピックのような短期トーナメントに向かない競技だと思っていたから、あまり期待していなかったのだけれども、この日本対台湾戦は思わず感動してしまった。決勝トーナメントの試合は、見逃せない。
野球の勝敗はピッチャーによって左右される。先発ピッチャーの連投は難しいから、ローテーションしなければならない。だから、相手チームとのローテーションの組み合わせによっては、番狂わせが起こる可能性が多い。オリンピックのようなトーナメントだと、強いチームが勝つとは限らない。ローテーションの谷間だった日本対オーストラリア戦は、典型的な例だと思う。
しかし、そんなシステムの問題は、選手たちの必死のプレーに比べれば、些細なことだった。
書き出せば、「全力プレー」「野球の原点」「高校球児のようなプレー」といった決まり文句が並んでしまいそうだけれども、とにかく、勝つためだけに必死になっている様子がよく伝わってきた。延長10回裏、小笠原の浅めの外野フライでタッチアップした高橋由伸の走塁が象徴的だった。あれだけなりふりかまわず一生懸命走っている高橋の姿ははじめて見た。ユニフォームが泥だらけなのも、目の下のパッチがはがれているのも気がつかないぐらい必死になっていた。実にいいものを見せてもらったと思う。
感動を押し売りするマスコミには辟易するけれど、優れた選手が我を忘れるほどに全力を尽くす姿を見ると、素朴に心を動かされる。
いまの日本のプロ野球は、高橋由伸のいちばん魅力的な姿を引き出すことはできない。ただそれだけでも、オリンピックに日本のプロ野球選手が参加した甲斐があったと思う。