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球団数を2つ減らして1リーグに統合するという提案は、経営に行き詰まった銀行の救済合併のようなもので、見る側の都合は考えられていない。
しかし、2リーグ制を維持しようという選手会の主張も、雇用を確保したいという労働組合らしい主張であって、これも、見る側の都合はほとんど考えられていない。
たしかに、パリーグの球団のファンにとって、自分の応援している球団がなくなるのは切ないだろうけれど、いまのパリーグが理想のリーグだとは思っていまい。
ナベツネが、巨人がパリーグに移籍することもあり得る、と言っていたが、これはどう考えてもブラフである。ナベツネは、巨人の利益を第一に考えている。ただでさえ、巨人戦の視聴率が落ちている状況である。パリーグに移籍すれば、さらに視聴率が落ちる。ダイエー戦以外、今のセリーグのチーム相手の試合より、視聴率があがるチームはいない。だから、これは1リーグ制に反対するセリーグのチームに対するナベツネの牽制である。
オーナーも選手会も、結局のところ、既得権益を守ることだけしか考えていないから、ファン不在といわれればまったくそのとおりである。かといって、目先のことしか考えられないファンを議論に入れたところで、よい案がでてくるとは思えない。
もうこうなったら、オーナーも選手会もすべての既得権限を手放して、まったく新しくやり直したらどうだろうか。
現在の野球協約や統一契約書は破棄して、すべてのチームは、いったん全選手を自由契約にする。MLBに行きたい選手はそうしてもよいし、日本のチームで働きたい選手は、どのチームとも交渉することができる。もちろん、社会人野球やクラブチームへ行ってもよい。
期限を決めて、それぞれのチームは、自分の資金力の範囲内で選手をあつめる。このとき、外国人選手枠は撤廃し、また、新たなに名のりをあげるチームは制限しない。ライブドアシダックスが参入してもいいし、韓国や台湾のチーム、ハワイやオーストラリアのチームが入ってもいい。
選手の再契約が決まった時点で、全チームを集めて、総当たりのリーグ戦をする。その結果に応じて、一部リーグ、二部リーグに振り分ける。もし、名のりをあげるチームが多ければ、三部、四部リーグに分けてもよい。また、社会人チーム、クラブチームを下位のリーグに組み込んでもよい。
この振り分けのためのリーグ戦は、おもしろそうだ。経営者、監督、コーチ、選手にとって、これだけ真剣に戦うシチュエーションは、なかなか考えられない。誰だって、ほんとうにリスクの高い真剣勝負はいやなものである。経営者や選手がいやがるぐらいの状況を作らなければ、見る側がおもしろくなるはずがない。
通常のシーズンでは、リーグごとに優勝チームを決め、入れ替え戦も行う。日本シリーズはなくなるけれど、そのかわりに、サッカーの天皇杯のように、日本のあらゆるチームが優勝する可能性のあるトーナメント戦を開催すればよい。下位のリーグのチームが優勝したり、その年のNO.1のピッチャーを持つ高校がプロ野球のチームと戦うという試合があれば、ぜひ、見てみたいではないか。