クールビズ

通勤で地下鉄有楽町線を利用している。
有楽町線桜田門駅は、国土交通省の真下にあって、霞ヶ関の官庁街から便利である。だから、官庁に通勤している人で、有楽町線を利用している人も多いようだ。
そんなこともあって、小学校から高校まで同じ学校に通っていて、いまでは霞ヶ関の住人になっている同級生のF君に、朝、有楽町線のホームでばったりと会ったことがある。正確に言えば、F君に声をかけられて、こちらは一瞬だれかわからなかったが、ためつすがめつ顔を見て、ようやくF君だと気がついた。
それというのも、昔は痩せぎすで顔も細かったF君が、恰幅がよくなり、髪をオールバックになでつけて、仕立ての良さそうな紺のスリーピースを着ていて、その、なんというのか、すっかり「お役人」そのものの風貌になっていたからだった。地位は人を作るというけれど、どうみても官庁の人にしか見えないF君は、さぞやその世界になじんでいるのだろうと思い、ある意味安心であった。
6月に入ってから地下鉄に乗っている人を見回すと、ノーネクタイの若いサラリーマンが目につくようになってきた。そのうちの何割かは、霞ヶ関の官庁に通っている人だろう。しかし、ある程度年をとった人でノーネクタイの人はあまり見あたらない。もしかしたら、通勤の時はネクタイを付けていて、官庁に着いてからネクタイをはずしているのかもしれない。
すっかりスリーピースのスーツがはまっていたF君は、ノーネクタイが似合いそうにもない。今は、どんな格好をしているのだろうか。「クールビズとかいうんですか」などといいながら、ノーネクタイで通勤しているのだろうか。それとも、官庁に着いてからおもむろにネクタイをはずしているのだろうか。