馬鹿と煙は

朝起きると、蝉が一匹鳴いていた。今年はじめての蝉の鳴き声だった。
家を出て、都電に乗るために雑司が谷霊園を通り抜ける途中、墓石の上に猫が座っているのを見つけた。猫の写真を撮ろうと思ってカメラを向けると、逃げられたり、そっぽを向かれたりすることが多い。しかし、墓石の上のこの猫は、余裕たっぷりで身じろぎもせず、写真を撮られていた。
馬鹿と煙は……。