おふくろの味、おれの味

私の父親は、おうちが大好きな人なので、あるとき「家のご飯がいちばんだなぁ」と言った。すぐさま、母親、兄、私の三人が「それは違う」と口を揃えて言った。「家のご飯」を作っている本人もそう言っているのだから、「家のご飯がいちばんじゃない」のは間違いないだろう。
子供のころ、ハンバーグが好物だったけれど、母親の作るハンバーグはおいしくなかった。この話をつれあいにすると、「おいしくない、ということはないんじゃいの」と、私の母親を弁護する。しかし、事実として、母親が作っていたハンバーグはおいしくなかったし、それには理由があった。母親は、ハンバーグを子供に食べさせていたけれど、自分では食べていなかった。これでは、ハンバーグの味がわかるわけがない。
母親のハンバーグに漠然とした不信感を持っていたある日、料理入門者向けのレシピを見ながら自分でハンバーグを作ってみたら、これが案外おいしかった。そのとき、自分が食べたいものは、自分で作った方がいい、ということを悟った次第。そのあと、いくつかのレシピを試してみて、だんだん自分好みのハンバーグに近づいてきた。
やっぱり、おふくろの味より、おれの味の方が、自分好みである。
最近は、ハンバーグを焼くとき、オーブンを使うようになった。フライパンで焼くと、火加減や時間の調節が難しくて失敗することもあったけれど、オーブンでは、だいたいうまくいっている。
わが家のオーブンは、電子レンジと一体型のものだけれども、大丈夫。まず、フライパンで表うらにこげめを付けてからオーブンの天板の上にならべる。レシピには、フライバンごとオーブンに入れると書いてあるが、これでも問題ない。天板には、あらかじめ、油を塗っておく。余熱モードで、220度14分でできあがり。