最後の目標

以前、現在の小泉純一郎の改革の基礎には、小沢一郎の政治改革があるということを書いた(id:yagian:20050813:p2, id:yagian:20050815:p2)。
小選挙区制による政権交代、二大政党制の実現。総理大臣、党首への権限の集中による政治優位の行政の実現、改革の実行、危機管理体制の構築。政治家による汚職の防止。
小沢一郎自民党幹事長になった1989年と比較すると、その当時、彼が構想していた改革の大部分は実現しているように見える。それが、彼自身が作り上げた非自民党政権ではなく、小泉純一郎自民党政権によって実現したことだけが予想外だったのかもしれない。
小沢一郎は先見性のある政治家だという声をよく聞く。たしかに、1989年の時点では、きわめて先見性があり構想力のある政治家だったと思う。しかし、現在では、彼から先見性のある構想を聞くことはない。民主党代表になった小沢一郎に残された最後の目標は、現実的な政権交代の実現だけではないかと思う。
民主党では、挙党一致ということが語られ、小沢一郎もその流れに同調しているように見える。たしかに、現在、分裂してしまっては、政権獲得の前提条件も失われてしまう。しかし、結束しただけでは民主党が政権を取ることはできない。2005年9月の衆議院選挙自民党公明党が2/3以上の議席を確保した結果、仮に参議院民主党が過半数を獲得しても、衆議院で与党は参議院が否決した法案を成立させることができる。もし、現在の自民党公明党連立政権の枠組みが変わらなければ、衆議院の任期がくる2009年9月まで民主党が政権をとる見込みはない。
しかし、民主党が、そして、小沢一郎が、次の衆議院選挙を目標にして、これだけの期間を、じっくりと準備にあてて力を蓄えることができるだろうか。私は、無理だと思う。小沢一郎は、これだけの期間、代表として民主党を掌握し続けることはできないと思うし、彼自身もそう考えていると思う。だから、政権交代を目指して動き出すはずである。そのためには、自民党公明党連立政権の枠組みを壊すしかない。
小沢一郎は、これまでにしばしば自民党の分裂を画策してきた。結局、今回も、政権交代を実現するために、同じ行動をするのではないか。
自民党公明党が、さまざまな不満を抱えつつも政権の枠組みを崩してこなかったのは、小泉純一郎の支持率が高く、選挙に勝ってきたからだ。一方、民主党の代表がどんどん変わったのは、選挙に負け、政権を取れなかったからだ。だから、今年9月に小泉純一郎から総裁がかわり、来年の参議院選挙で自民党が負けた場合、自民党の求心力が衰える可能性がある。その時、小沢一郎は、自民党の総裁選で負けて反主流派となった勢力に、分裂を働きかけるのではないか。
しかし、これまで、小沢一郎自民党の分裂を画策して成功したのは、自身が自民党から出たときだけである。今回も、成功する見込みは低いのではないか。そして、仮に、自民党を分裂させて政権を取ったとしても、そのとき、小沢一郎でなければ実現できないテーマは、もはや残されていないのではないか。