鶏の絵

備忘録として腰痛の顛末は書いておこうと思うけれど、そればかりを書いているのもつまらないので、今日は、目先が違う話を書こうと思う。
先月、京都に旅行した際、京都国立近代美術館に立ち寄り、「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」を見てきた。
去年の夏、京都の寺町通りにある芸艸堂*1という版画屋で見かけた「玄圃瑤華*2」という伊藤若冲の版画を見て一目惚れをした(id:yagian:20051225:1135520988)。それ以来、機会を見つけて、江戸時代の絵の眺めに行くようになった。
若冲というと、「動植綵絵*3」や「鳥獣花木図屏風*4」に代表されるカラフルな絵のイメージが強い。しかし、私が最初に触れた若冲が、白と黒のクールな版画だったから、カラフルな若冲の絵には少々違和感がある。と、そんなことを考えていたら、夏目漱石硝子戸の中」(岩波文庫 isbn:400310112X)のなかに、若冲の絵についてこんなことが書かれていた。

……話題がいつか絵画の方に滑って行った。その男はこの間参考品として美術協会に出た若冲の御物を大変に嬉しがって、その評論をどこかの雑誌に載せるとかいう噂であった。私はまたあの鶏の図が頗る気に入らなかったので、此所でも芝居と同じような議論が二人の間に起こった。

確かに、若冲のカラフルな絵は、たまに見るにはいいかも知れないけれど、自分の家に飾ることを考えると、にぎやかすぎて落ち着かないかもしれないとも思う。
プライスコレクションのなかの若冲の絵のなかでは、鳥や植物、人物からいろいろな図形や曲線を見つけている様子が楽しい水墨画「花鳥人物図屏風*5」が気に入った。図形や曲線を見つけてそれを切り取る「玄圃瑤華」にも似ているところがあるように思う。