まだらの紐って

ネタバレ注意。この先、コナン・ドイル「まだらの紐」(「シャーロック・ホームズの冒険」(新潮文庫 asin:4102134018) 所収)のストーリーについて書かれています。

村上春樹羊をめぐる冒険(上・下)」(講談社文庫 asin:4062749122)を読んでいたら、主人公が「シャーロック・ホームズの冒険」を読むシーンがあり、なんとなく、久しぶりにシャーロック・ホームズ物をコンプリートしてみようと思い立った。
途中で飽きて放り出してしまうかもしれないけれど、今のところ、「緋色の研究」(新潮文庫 asin:4102134050)、「四つの署名」(新潮文庫 asin:4102134069)「シャーロック・ホームズの冒険」まで読んだ。
シャーロック・ホームズの冒険」の奥付を見ると、発行日が昭和28年3月31日、平成16年6月5日105刷と書かれている。たいしたものである。
以前の日記(id:yagian:20050726:p3)にも書いたように、シャーロック・ホームズ・シリーズの人気の秘密は、アラだらけというところにあるのだろう。率直に言って、ミステリーとしての完成度が高いわけではない。現在のミステリーの水準から見て低いというだけではなく、エドガー・アラン・ポーのミステリーと比較しても低いと思う。けれども、妙な魅力がある。
シャーロック・ホームズの冒険」のなかで、「まだらの紐」は、いちおう名作ということになっている。しかし、最初の被害者の姉ジュリア・ストーナーが、「まだらの紐」と言ったばかりに迷宮入りしそうになったけれど、そのときに「毒蛇」と言えば、さっさとロイロット博士が逮捕されていただろうに。「花婿失踪事件」と「椈屋敷」は同工異曲で、また、遺産目的で娘の結婚をじゃまする話かよ、と突っ込みを入れながら読むのも楽しい。
ここまで読んだなかでは、「唇の捩れた男」がいちばんできがよかったように思う。そこまで完璧なメークアップができるのかという突っ込みは入れられるけれど、被害者の死体消失トリックとしてはなかなかだと思う。
とはいえ、いちばん楽しく読むことができたのは、不可解な部分の多さも含めて「ボヘミアの醜聞」だった。