世界大戦はまだ終わっていない

Google News のUSA版を見ていたら、パレスチナで、ハマースとファタハの間の緊張が高まり、内戦に拡大しそうだ、との記事があった。

A Hamas spokesman, Fawzi Barhoum, made a parallel accusation, charging Fatah, in alliance with Israel and the United States, with trying to destroy Hamas and overturn the results of democratic elections in January 2006, in which Hamas won a legislative majority.

"Palestinians in Gaza nearing civil war" International Herald Tribune, June 12, 2007 By Steven Erlanger and Isabel Kershner
http://www.iht.com/articles/2007/06/12/news/mideast.php?page=1
ハマースのスポークスマン、ファジィ・バルホウム(発音はよくわかりません)は、イスラエルアメリカ合衆国と協調し、ファタハが、ハマースの壊滅させ、ハマースが正当な手続きによって多数派を占めた2006年1月の民主的な選挙結果を覆そうとしている、と非難した。
ハマースは、イスラエルの存在を否定し、武装闘争を行う非合法部門を持つ組織である。一方で、教育、医療を行う自助組織としての側面もあり、パレスチナ住民からの根強い支持がある。
ファタハは、PLOの最大派閥であり、パレスチナ解放運動ではもっとも重要な存在だった。テロ活動も行っていたが、ハマースと比較すれば、現在では、イスラエルとの和平を求める立場にある。
パレスチナで民主的な選挙が行われた結果、ハマースが勝利し、パレスチナ自治政府イスラエルとの和平交渉が難しくなった。このため、イスラエルとアメリカは、かつては厳しく対立していたファタハを支援するようになった。ハマースの側から見れば、アメリカ的価値観に基づく民主的な選挙によって正統性を勝ち得た我々と対立するファタハを支援するのは、ダブル・スタンダードなのではないか、ということになるのだろう。
この前の日記で、イラクの問題は、もとをたどればイギリスが恣意的に引いた国境線に原因があると書いた(id:yagian:20070604:1180929167)。このパレスチナの問題も、もとをたどれば、第一次大戦、第二次大戦の戦後処理に由来するものであり、イギリスがアメリカに置き換わっているけれど、西欧の強国が影響力を行使するという構図は変わっていない。
たしかに、冷戦が終わり、東ヨーロッパ諸国がEUに参加することで、第一次世界大戦第二次世界大戦のヨーロッパ地域での最終的な処理は終わったように見える。しかし、中東の問題、そして、朝鮮半島、ふたつの中国の問題などは、世界大戦の戦後処理が完結していないと見ることができる。
冷戦後、文明の衝突の時代になるという主張がなされていた。しかし、イランやパレスチナで同じ文明圏に属する人たちが内戦を引き起こすことは、文明の衝突論では説明できないだろう。ヨーロッパ以外の地域では、世界大戦がまだ終わっていない、ということなのではないか。