イラク情勢とアルカイダのテロの拡散

英語の耳ならしのために、podcastでアメリカのラジオニュースを聞いている。
去年のいまごろは、毎日のようにイラクでの自爆テロがトップニュースになり、イラクの市民やアメリカ軍の被害が拡大していた。当然、アメリカ国内でもアメリカ軍のイラクからの撤退が大きな政治的問題となっており、超党派の議員によって組織された Iraq Study Group によるイラクからのアメリカ軍の撤退へのプロセスを示した報告書が発表された。この報告書では、撤退する前提として、イラクの治安状況を改善しイラク軍、警察が治安を維持できるようにするために、一時的に増派することが書かれていた。
その後、国防長官の更迭とアメリカ軍の増派が実行された。増派当初は、イラクの治安状況が改善しないという報道がなされていたが、その後、国際関係ではサブプライム問題や地球温暖化問題が大きなトピックとなったためか、イラク関係のニュースをあまり目にしなくなった。
先日、podcastで久しぶりにイラク情勢のニュースを聞いた。イラク駐留アメリカ軍からの報告で、イラクの治安状況は急速に改善し、開戦以来もっともよい状況になり、また、イラク軍や警察も徐々に整備が進んでいるという。確かにこのところイラクのテロのニュースを耳することがない。そのかわりか、アフガニスタンパキスタンの情勢が不安定になり、アルジェでアルカイダ系のグループのテロがあった。
このような状況を考えると、イラクでテロリストの活動が激しかったのは、イラク戦争以後の事実上の無政府状態によるものだったのだろう。イラク戦争で、イラクの治安を維持すべきイラク軍、イラク警察がほぼ完全に解体され、しかし、アメリカ軍は治安維持のために必要な戦力を投入しなかったため、テロリストの自由な活動を許してしまった。遅まきながら、増派をしたこと、イラク軍、イラク警察が徐々に整備されてきたことの効果があらわれきた。これに対して、アルカイダ系のグループは国外への拡散し、北アフリカでテロを起こした。これから、国内の政府の治安維持能力が弱い国で、国連や大使館などの施設を狙ったテロが起きる可能性が高いのではないか。
このように考えると、日本国内での評判はきわめて悪かったけれど、不足していた多国籍軍を補うという意味で自衛隊イラク派遣は一定の貢献はしていたと言えるだろう。また、国際的なテロリストは、治安が手薄な国を狙って根拠地を作り、テロを起こす。北アフリカや中央、南、東南アジアなどの諸国への治安維持支援の国際的な枠組みが必要ではないだろうか。