- 作者: 松沢弘陽,植手通有
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/10/26
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- 作者: 丸山眞男
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1983/06/01
- メディア: 単行本
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戦前に丸山眞男が東京帝国大学の法学部助手になるとき、南原繁に東洋政治思想史を研究するように指示された。以下は、そのときの言葉である。
「……ぼくらはプラトンやカントを勉強している。たしかに西洋の政治思想史ではあるけれども、その中に、普遍的なものがあると信じているからやっているのだ。だけど、現代のような時代では通用しない。これからは日本の思想をやる人が出てきて、いまの軍部や右翼が日本精神高揚とか言っているようなものではない日本思想を科学的に研究しなければならない。…」
たしかに、「日本政治思想史研究」は、本居宣長を考える際には右翼も左翼も関係なく必読の本となっているから、丸山眞男は南原繁の思いを実現したことになる。
私自身に丸山眞男対して「進歩的文化人」という偏見があったから、そのイメージを裏切る発言がいくつかあった。
…中国は混沌としているという感じなんだな。辛亥革命以後、ひとつの国家をなしていないという認識だった。ひとつの国家があって、そこへ日本が軍事力をもって侵略したという見方では、どうも理解できないことがでてくる。…
…韓国との関係だけではなく、北朝鮮についても、すぐに当面することになるでしょうが、過去の歴史について、謝罪すべき問題と、そうでない問題があると思うのです。よく言われることだけど、帝国主義国で、謝罪した国があるかといえば、ありませんね。いつ一体イギリスはインドに謝罪したか、いつドイツは膠州湾について謝罪したか。いつソ連はツァール/ロシアのやったことに謝罪したか。こういうことと、たとえば、朝鮮人の強制連行など、植民地支配の下で行われた人権侵害とは基本的に違う。それは無条件にきちんと謝罪すべきことです。…
…(山羊註:日韓併合前の韓国の)独立派、改革派は、一般的には親日派だったから、のちに日韓併合という否定すべからざる事件があって、日本政府の傀儡とされた。そうじゃないのですけどね。清国に対する長い間の冊封体制を絶って近代的な独立国家になるためには、隣の日本がいち早く開国して独立しているわけですから、どうしたってプロ日本にならざるをえない。なかには傀儡もいたでしょうが、みんなナショナリストなのです。日本の傀儡だったという彼らの汚名を、これからただしていかなければならないと思います。
右翼や左翼、進歩派や反動派というステレオタイプ、レッテルは別にして、まともな人という人がいる。丸山眞男はその一員だという感を強くした。