カフカ的疲労感

1月の谷川真理ハーフマラソンの5kmの部に出場して楽しくは知れたので、次の日曜日に開催される目白ロードレースの5kmの部にエントリーしている。しかし、2月に入ってから調子が悪く、事前の練習があまりできず、オーバーウェイトになっている。今日もぐずぐずと寝て過ごしてしまった。この分では、出場できなくなるかも知れないし、出場できても苦しいレースになると思う。
最近、なるべく精神的なストレスがないように気をつけて生活をしているから、気持ちが落ち込むことはあまりない。しかし、疲労感や倦怠感といったうつ病の身体的症状が抜けないのが困ったものである。朝、目が覚めると、重労働をした後のような全身の疲労感があって、身体が布団に沈み込んで行くような感覚がある。目が覚めたら理由なしに毒虫に変身してしまったような不条理な疲労感である。この不条理さに直面すると、いったい疲労とはどのようなことがらなのだろうかと形而上的な思考に誘われる。
通常の肉体的疲労は、血液で供給される酸素で可能な有酸素運動以上の強度の酸素を無酸素運動を行うと、筋肉中に乳酸が蓄積され、それを感知することで引き起こされる。疲労感によってこれ以上無酸素運動を続けることが難しいことを知ることができる。安静にすると徐々に乳酸が分解され、疲労感が解消する。しかし、うつ病の疲労感は、特に身体を動かさなくても引き起こされる。主治医に、うつ病による疲労感が引き起こされているときと、肉体的な疲労感があるとき、脳内では同じ状況、同じ化学物質が分泌されているのか、それとも、感覚が似ているだけで脳内の状況は異なっているのか尋ねたことがある。科学的には結論は得られていないけれど、脳内の状況は似ているのではないか、というのが答えだった。
うつ病の疲労感におそわれると、運動することが困難になるから、とりあえずは安静にしていることになる。しかし、疲労感があっても、実際に筋肉に乳酸がたまっているわけではないから、安静にしていれば疲労感がとれる保証はないし、逆に、肉体的には運動できないこともないはずである。もしかしたら、無理に運動をすれば筋肉に乳酸がたまっていないことを脳が感知して疲労感がとれるのではないかと思って、無理にジョギングをしてみたことがあった。結果は、疲労しているときと同じように、思うように身体が動かず、疲労感もとれることがなかった。もしかしたら、脳内の状況だけが肉体的疲労と共通しているだけではなく、何らかの理由で筋肉に乳酸がたまっているのかもしれない。
うつ病患者の脳内では、セロトニンという物質が不足していることが知られているようだ。抗うつ剤は、神経のレセプターがセロトニンを吸収することを阻害し、脳内のセロトニンの濃度を維持する効果があるという。もし、セロトニン不足が疲労感を引き起こしているとすると、肉体的疲労をしている人の脳もセロトニン不足になっているのだろうか。また、肉体的疲労をしている人に抗うつ剤を処方すると疲労感が解消するのだろうか。
と、あれこれ考えたところでカフカ的疲労感はなかなか緩和されないのであった。最近の様子では、夕方になれば疲労感が抜けてきて元気がでてくる。それまではおとなしく音楽を聴きながら横になっていようと思う。