だるさ物質

朝、目が覚めると、身体の隅々まで「だるさ物質」が充満している。
まぶたもだるく、目を開けるのもおっくうである。なんとかまぶたをこじ開け、重い棍棒のような腕で身体を支えて立ち上がると、体重が100tほどある恐竜になった気分である。一歩一歩踏み出す足が、床にめり込んで行く。
「だるさ物質」の体内濃度が高すぎるので、活動するのはあきらめて寝床に戻る。今度は、全身が布団に潜り込んで行く。
まぶたの重さに負けて目をつぶる。しかし、眠れる訳ではない。脳にも「だるさ物質」が充満しているから、まとまったことを考えることができない。それでも、退屈はする。しかし、退屈しのぎのことは、目を開けることすら難儀である。
夕方になれば徐々に「だるさ物質」が抜けて行くことはわかっている。それまでは、退屈を我慢して、身体の重さに負けている。