地球温暖化問題を学習してみる(その2)

昨日のエントリー(id:yagian:20080730)に書いたように、まず、IPCCの「SPM」*1を読みはじめよう。
第一章は、「気候変化とその影響に関する観測結果」となっており、その冒頭にこの章の結論が書かれている。

気候システムの温暖化には疑う余地がない。このことは、大気や海洋の世界平均温度の上昇、雪氷の広範囲にわたる融解、世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。

観測結果から見て、すでに地球は温暖化しつつある。これは、懐疑派のロンボルグ、赤祖父ともに認めている。
なお、地球温暖化問題の懐疑派といっても、ロンボルグと赤祖父は懐疑している点が違っている。ロンボルグは、IPCCの研究成果は基本的に認めている。ただし、京都メカニズムなどに代表される温室効果ガスの排出を抑制させる政策の効果、効率性に疑問を投げかけている。一方、赤祖父は、IPCCの研究成果自体に疑問を持っている。赤祖父、ロンボルグのそれぞれの論点について、後述したいと思う。
観測結果から導き出された温暖化の現状は、「過去100年間(1906〜2005)の線形の昇温傾向は100年あたり0.74℃」であり、「世界平均海面水位は……1961年以降、年平均1.8mmの速度で上昇」しているとのことである。
地球温暖化という現象がどの程度の規模のものなのかを直感的に理解することは難しいけれど、この気温上昇と海面水位上昇の数値は参考になると思う。私個人としては、思いのほか海面上昇のスピードが遅いと感じた。
それでは、この温暖化によってこれまでどの程度の被害が人間社会に及ぼされているのだろうか。「SPM」は、かなり慎重な書き方をしている。

適応や気候以外の要因のせいで、その多くは識別困難であるものの、その他の地域的な気候変化が自然環境及び人間環境に及ぼす影響が現れつつあることに中位の確信度がある。

マスコミでは、温暖化の影響か、という言葉が日常的に使われているが、実際に温暖化の影響なのか識別は困難である。例えば、ハリケーン・カトリーナによる被害が温暖化の影響ではないかとする報道があったが、実際には、ニューオーリンズの防災体制の不備など気候以外の要因があり、温暖化の影響で被害が拡大したのか識別困難である。過去、100年間で0.74℃の温度の上昇によって、明確に温暖化の被害と識別できる事象は現状ではほとんどないといってよい。
赤祖父俊一「正しく知る地球温暖化」のなかで、温暖化に関する報道を次のように皮肉っている。

炭酸ガスによる温暖化が大変であるなら、世界中にもっと「立派な」例があってもよいのではないか。ないということは、どういうことか、報道に考えてもらいたい。

現状まで温暖化による目立った被害がないということは、人間が温暖化に適応できる可能性の高さを示していると思う。しかし、今後温暖化が急激に加速すれば大きな被害が生じる可能性までは否定できないだろう。
さて、「SPM」の次の章は「変化の原因」である。ここは考えるべき点が多い章であるから、また、明日続きを書こうと思う。

ラジェンドラ・パチャウリ―地球温暖化 IPCCからの警告 (NHK未来への提言)

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正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために

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*1:IPCC「第四次評価報告書統合報告書 政策決定者向け要約」http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html