地球温暖化問題を学習してみる(その5)

ここのところ書き続けている地球温暖化問題に関するエントリー(id:yagian:20080805)の続きである。
IPCCの「SPM」*1も、ここまでは現実の観測結果や比較的信頼性の高いシミュレーションの結果に基づく議論だったけれど、この章からは、そろそろ不確実性が高いシミュレーション結果に基づき、政策にも踏み込んだ議論となるため、解釈が難しい。このエントリーに書かれていることは、あくまでも、私見も入った解釈であることに注意してほしいと思う。
ここまでのエントリーを読んだ方にはわかっていただけたと思うけれど、IPCCの報告書は、アル・ゴア不都合な真実」のようなエキセントリックなことは書かれていない。(冷静なIPCCとプロパガンダに偏ったアル・ゴアが同時にノーベル平和賞を受賞したことには皮肉を感じる。)マスコミの地球温暖化に関する報道も玉石混交で、なかには、IPCCの報告書に書かれていないことも、IPCCにおいて報告されたと書かれていることすらある。
そういった意味で、地球温暖化問題を正確に理解するためには、できるだけIPPCの報告書の原典にあたってほしいし、また、中立の立場でIPCC報告書を解説したわかりやすい書籍が出版されることが望まれる。
さて、今日は「SPM」の「第四章 適応と緩和のオプション」に入る。ここでいう適応とは、温暖化した状態への適応を、緩和とは温室効果ガスの排出を抑制して温暖化の進行を緩和させることを意味している。
これからどれだけ厳しく温室効果ガスの排出を抑制したとしても、すでに地球温暖化は始まっているし、これまでに排出されてしまった温室効果ガスがある。したがって、いずれにせよ、緩和策だけではなく、適応策も求められるということになる。

適応能力は、社会や経済の発展と密接に結びついているが、社会間や社会内で均等に分布しているわけではない。

同じだけ地球温暖化の影響を受けたととしても、実際の被害はそれぞれの社会の状況、所得によって大きく違っている。仮に、地球温暖化によって台風、ハリケーンが大型化したとしても、日本とアメリカ、ミャンマーバングラデシュではその結果は大きく異なっているはずである。適応能力を高めるためには、発展途上国の貧困対策、経済成長が大きな意味を持っている。

今後数十年にわたり、世界の温室効果ガスの排出量の緩和ではかなり大きな経済的ポテンシャルがあり、それにより世界の排出量で予想される増加を相殺する、または排出量を現在のレベル以下に削減する可能性があると指摘している。

なかなか理解が難しい文章である。噛み砕いていうと、現在の市場経済における制約を取り除いた場合に可能となる温室効果ガスの削減可能な量は、増加量と同等かそれを上回るため、世界の温室効果ガスの排出量を全体として削減することは可能である、という意味であるようだ。(言い換えの方がかえって理解しにくいかもしれない……)
つまり、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出を削減するなどそもそも無理だ、とする悲観論的な意見に対し、適切な政策をとりさえすれば現在の技術を用いて排出削減は十分可能だという経済シミュレーション結果を示している。
ここでも、シミュレーションの信頼性については、専門家ではないので、評価しようがない。温室効果ガスの排出削減を実現するためには、かなり大胆な政策、制度の変更が必要となると思われる。

不都合な真実

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ラジェンドラ・パチャウリ―地球温暖化 IPCCからの警告 (NHK未来への提言)

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正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために

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*1:IPCC「第四次評価報告書統合報告書 政策決定者向け要約」http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html