実践とボトムアップを組み合わせていこう

ここのところエリヤフ・ゴールドラットが提唱しているTOC(Theory of Constraints)に関連した本、ゴールドラット「ザ・ゴール2」「クリティカル・チェーン」岸良裕司「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」「全体最適の問題解決入門」を続けて読んだ。
私の勤めている会社は、基本的にプロジェクトワークで仕事を進めているため、私自身もプロジェクト・マネジメントに興味がある。TOC、特に、そのプロジェクト・マネジメントへの応用であるクリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメントは強力なツールで、有効性が高いという印象を持った。
しかし、私個人のスキルとして身につけるのであれば、自分ががんばればいい話だが、効果を上げるためには、組織としてTOCに取り組む必要がありそうである。そのためには、組織としてTOCに取り組むという意思統一が必要になるが、組織を説得し、理解を得て、実践に至るまでが難しそうである。
「クリティカル・チェーン」と「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」を読んでもらえれば、それなりに興味を持つプロジェクト・リーダーも多いと思う。しかし、なにぶん、「クリティカル・チェーン」が大部の本である。私は、たまたまいま余裕がある立場にあって、ゆっくり本を読むことができたが、日常のプロジェクト管理に追われているプロジェクト・リーダーに読んでもらうことは難しいところがある。
それでは、私自身が説明できないだろうか。今のところは本を読んだだけで、実践しているわけではないから、自信を持って説明することは難しいし、内容を十分理解したともいえない。
とりあえず、最初のステップとしては、自分が関係したプロジェクトから実践してみて、理解を深めるのが良さそうだ。実践してみて、それで効果があがれば、自信を持って組織の人に説得することができるだろう。実績があがれば、説得力も増す。徐々に周囲の人に広めていいくというボトムアップの方法で進めて行こう。
この四冊から示唆を受ける点はたくさんあるけれど、「目標を突破する実践プロジェクトマネジメント」から一つ引用しよう。

▶失敗したプロジェクトの特徴
・目的があいまいなまま進めてしまっている
・何が成功なのか定義されていない
・とにかく始めてしまって、進めたらそのつど考える
・期限だけが決まっている
(p122)

なかなか耳が痛い。泥沼にはまったプロジェクトを思い返してみると、目的があいまいなまま進めたため、目的をめぐって神学論争が起こったり、仕事の終盤でどんでん返しがあったりして、期限寸前になっても事態の収拾の目処も立っていないということになる。プロジェクト・マネジメントの本を読むとどれでもプロジェクトの定義のフェーズで、プロジェクトのスコープを明確にすることを求めているが、自分で痛い目にあって、ようやくそのことを体得できたように思う。
全体最適の問題解決入門」からもう一つ引用しよう。

TOCでは、ソクラテス的なアプローチという言葉が重視されている。
……
 答えというのは、ある特定のケースや条件のもとで編み出されたものであり、それがどんなにいいものであったとしても、それがあなたのケースに必ずしも当てはまるとは限らない。
 一方、質問というのは、はるかに大きな普遍性を持つ。多くの場合、現場の人は特定のケースにおいて知識を持っている。それに対して適切な質問をすることは、問題解決の糸口をロジカルに考え出すきっかけになるのだ。
(p51)

ソクラテスは、相手に疑問を投げかけ、対話を通じて哲学を展開するという方法を取っていた。「ソクラテス的なアプローチ」とは、対話を通じてプロジェクトを展開するアプローチを意味しているのだろう。
TOCについて人に簡単に説明をするのは難しいのは、回答を示したものではなく、対話的な問題解決のロジックを示したものだからだと思う。たしかに、それだけに普遍性は高く、応用が広い方法だと思う。
やはり、人に理解をしてもらうには、実践を通じてそのプロセスに参加してもらうことが必要なのだろう。まずは、自分で実践するところからはじめよう。

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?

CD‐ROM付 目標を突破する 実践プロジェクトマネジメント

CD‐ROM付 目標を突破する 実践プロジェクトマネジメント

全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!

全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!