新聞の片隅から(3)

日経新聞の経済教室の下に、「やさしい経済学」という横長、横書きの欄がある。今日は、「経営学のフロンティア 人材育成と企業競争力」の連載の第一回「永遠の経営課題」である。
ここにちょっと印象に残った言葉があったので引用したい。

……人材の内部育成はビジネスモデルや戦略と統合された人材を継続的に供給することで、長期的な競争力の維持につながる。競争力の源泉は人材そのものではなく、能力開発のシステムにあるとの考え方である。実際、トヨタ自動車ゼネラル・エレクトリックなどの優良企業はほぼ例外なく、独自のビジョンで人材を育成し、またそのための仕組みを構築してきた。
日本経済新聞朝刊 2008年10月22日 27面 「やさしい経済学ー経営学のフロンティア 人材育成と企業競争力 1 永遠の経営課題」一橋大学教授 守島基博

しばらく前のエントリー「新聞の片隅から」(id:yagian:20081016:1224159369)で、企業内研修を公開する試みについて触れたが、トヨタ自動車ゼネラル・エレクトリックの研修であれば参加したいと思う社外の人も多いのではないかと思う。少なくとも、私はどんなものか参加してみたい。
社内研修を企画するときに「GE式ワークアウト」を参考にしてアクション・ラーニングのプログラムを作ってみたけれど、GEでは実際にどのような雰囲気でワークアウトが行われているのか触れてみたいと思った。優良企業は、その人材育成の方法を公開することも社会貢献の一環となるのかもしれない。
もっとも、トヨタ自動車が中心となって作った全寮制の中高一貫校である海陽中等教育学校は、管理教育が行き過ぎているという評判を聞く。
仕組みづくりこそが長期的な競争力の維持につながるとする主張は、「ビジョナリー・カンパニー」の次の一節を思い起こさせる。

 すばらしいアイデアを持っていたり、すばらしいビジョンを持ったカリスマ的指導者であるのは「時を告げること」であり、ひとりの指導者の時代をはるかに超えて、いくつもの商品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くのは、「時計をつくること」である。わたしたちの調査結果の第一の柱として、この章では、ビジョナリー・カンパニーの創業者が概して時を告げるタイプではなく、時計をつくるタイプであったことを明らかにしていく。

「時計をつくること」とは、競争力を維持し続けるための仕組みをつくることを意味している。カリスマ的指導者個人の資質ではなく、仕組みこそが競争力の源泉であるという考え方は、守島教授と共通している。
私の勤めている会社は、個々人の学習意欲は高く、それぞれ自らの努力で自己啓発にはげんているように思うけれど、会社としての人材育成への投資や仕組みづくりは競争力の源泉といえるレベルには至っていない。また、それを競争力の源泉にしようという経営の意志や社内の共通認識もできていないように思う。まだまだ、改革の余地は大きい。

GE式ワークアウト

GE式ワークアウト

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則

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