隠し砦の三悪人

黒澤版とリメイク版の「椿三十郎」を比べて見た(id:yagian:20100211)のがなかなかおもしろかったから、今度は「隠し砦の三悪人」の黒澤版とリメイク版を比べて見ようと思った。
黒澤版の「隠し砦の三悪人」は、ユーモアたっぷりの痛快娯楽時代劇である。黒澤明の映画にあるユーモアが好きだが、この作品では農民の二人組を演じた千秋実と藤原釜足がいい味をだしている。もちろん黒澤時代劇にある迫力の部分も不足なく、特に、三船敏郎が馬上で刀を抜いて敵を追いかけるシーンに目を見張らされる。脚本もよく練られていて、物語の展開にぐいぐいと引っ張られる。黒澤明の娯楽映画には、エンターテイメントの要素がぎっしりと詰め込まれている。
椿三十郎」のリメイク版は黒澤版に忠実だったが、「隠し砦の三悪人」のリメイク版は松本潤のアイドル映画にするために、後半部分が改変され、長澤まさみが演じる雪姫と松本潤が演じる武蔵の恋愛譚になっている。また、観客層を意識したのかストーリーがよりわかりやすいように演出されている。
アイドル映画という前提で作られたリメイク版と黒澤版の優劣を論じることにはほとんど意味がないだろう。松本潤のファンだったら十分楽しめる作品になっていたのではないかと思うが、松本潤のファンではない自分にはこの作品について語る資格がないような気がする。

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