東京の田舎者

樋口毅宏「さらば雑司ヶ谷」(新潮社)を読んだ。雑司が谷在住の私としては、この題名を見たら読まないわけにはいかない。
作者は雑司が谷出身というだけあって、雑司が谷の細かいネタがぎっしり詰まっていて土地勘のある私にとっては面白かった。雑司が谷に関係ない人にとってはこの小説を楽しめるかちょっとわからないが。
この小説の中で、雑司が谷の住民のことを「東京の田舎者」と呼んでいるところがある。言い得て妙だと思った。
東京の中でも雑司が谷のような古い住宅街では、村のようなコミュニティがあって地元の人にとっては田舎的である。最近では雑司が谷も観光地のようになって休日にはカメラをぶら下げた人たちがやってくるが、もともとは住民以外は立ち寄ることがない閉鎖的な土地だったはずだ。私は雑司が谷出身ではないけれど、生まれ育った北区上中里もそんな東京の中の田舎のような土地だった。
いまも通勤以外はだいたい雑司が谷村の徒歩圏内で東京の田舎暮らしを満喫している。

さらば雑司ヶ谷

さらば雑司ヶ谷