トゥルー・クライム

クリント・イーストウッドの映画に惹かれたのは、小学生の頃東京12チャンネルで放送していたマカロニ・ウェスタンだったと思う。映画館に見に行ったのは中学生の頃「アルカトラスからの脱出」だった。もうかれこれ30年間以上も、彼のファンを続け、映画を見続けていることになる。
その頃のクリント・イーストウッドは、大ヒットとなったり、アカデミー賞にノミネートされたりすることなく、ハリウッドの片隅でこつこつと映画を作り続けていたという印象がある。それが今ではすっかりハリウッドを代表する巨匠になり、精力的に傑作を作るようになり、感慨深いものがある。巨匠になる前のクリント・イーストウッドの映画も、今見直してみると傑作とまでは言わないまでも、佳作ぞろいだと思う。(彼の映画のなかで、そんな時代に作られた「ペイル・ライダー」がいちばん好きだ。)そのような映画作りの積み重ねが、現在の彼の糧となっているのだと思う。
トゥルー・クライム」は、彼が巨匠となる直前に作られたサスペンス映画の佳作である。
かつてニュー・ヨークの大手新聞社の敏腕記者だったスティーブ・エベレットは、女性関係と飲酒で身を持ち崩し、サン・フランシスの小さな新聞社で働いている。死刑執行当日に死刑囚のフランク・ビーチャムのインタビューすることになった。しかし、ビーチャムが殺人を犯したことに疑問を感じ、彼の無罪を立証することに奔走するが、死刑執行まで時間が迫ってくる。
70歳代のクリント・イーストウッドが、幼い娘がおり、20歳代の女性を口説くという設定のスティーブ・エベレットを演じているのにはやや無理がある。また、彼が敏腕記者といっても数時間で冤罪の証拠を掴むというストーリーも少々現実離れしており、傑作というにはやや傷はあるものの十分楽しめるサスペンス映画になっている。特に、黒人の死刑囚フランク・ビーチャムが威厳のある人物として印象的に描かれており、クリント・イーストウッドのマイノリティーへの共感がよく伝わってくる。

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