ポールの「思想」

最近、ジョン・レノンの曲を聴いている。このウェブログにもポールとジョンをテーマにした二つのエントリーを書いた。
(id:yagian:20101217:1292538339, id:yagian:20101219:1292711184)
また、そのエントリーに稲本がトラックバックをつけてくれ、ポールとジョンの比較を書いてくれた。(id:yinamoto:20101217)
その続きで、ポールとジョンの歌詞について考えてみたい。
一般的には、ジョンの歌詞はメッセージ性、思想性が強く、ポールは歌詞の内容よりは楽曲重視だと思われていると思う。
基本的にはその通りだと思う。特に、ジョンはオノ・ヨーコと結婚し、ビートルズが解散した以降は強いメッセージ性を持った歌詞を書いている。その代表が"Imagine"であり、"Give Peace a Chance"である。
Imagine 歌詞:http://goo.gl/65x9A

Give Peace a Chance 歌詞:http://goo.gl/49TW5

一方、ポールはあまり歌詞の内容にはこだわりはないように見える。例えば、"Maxwell's Silver Hammer"は、牧歌的な曲調に、銀のハンマーで撲殺する男をテーマとした歌詞がついている。歌詞は奇妙な内容で、それ自体には特にメッセージが込められているとは思えない。牧歌的な曲調とそれにまったく似つかわしくない残虐な歌詞の落差の面白さ、ポールのジョークなのだと思う。
Maxwell's Silver Hammer 歌詞:http://goo.gl/RS8JV

同じように非常にシンプルな言葉を使った歌詞でも、ジョンの"Love"とポールの"Hello Goodbye"でもずいぶん違う。"Love"は愛をめぐる哲学的な歌詞になっているし、"Hello Goodbye"はシンプルすぎる内容でもしかしたら深遠な含意があるのではないかと邪推してしまうけれど、やはりナンセンスな言葉遊びなのだと思う。
Love 歌詞:http://goo.gl/B4fPZ

Hello Goodbye 歌詞:http://goo.gl/pyHWJ

特に対照的なのは、二人のクリスマスソングだ。平和主義のメッセージとなっているジョンの"Happy Xmas (War Is Over)"と、単純にクリスマスを楽しもうと歌っているポールの"Wonderful Christmastime"である。
Happy Xmas (War Is Over) 歌詞:http://goo.gl/IBnaW

Wonderful Christmastime 歌詞:http://goo.gl/fAAJT

"Happy Xmas (War Is Over)"の歌詞のキーフレーズは"War is Over, if you want it, war is over now"で、"Wonderful Christmastime"の歌詞のキーフレーズは"Simply having wonderful christmastime"だろう。
"Wonderful Christmastime"は、"Happy Xmas (War Is Over)"より後に作られているから、おそらくポールはジョンのクリスマスソングを意識したと思う。反戦のメッセージを込めて名曲とされているジョンのクリスマスソングがあり、それに対して、ただ単純にみんなですばらしいクリスマスを過ごそう、と歌うポールにはそれなりの意図があったのだと思う。
思想とまでは言えないかもしれないけれど地に足がついたポールの生活態度が伝わってくる。さらに言えば、ポールにはあえて高邁な思想を語らないという思想があると思う。そんなポールの「思想」にはちょっと共感する。

おまけ

ポールの歌詞の中では、"Penny Lane"は、彼の生まれ育った街や子供時代への郷愁がしみじみと伝わってきて、自分と重ね合わせることができ、気に入っている。
Penny Lane 歌詞:http://goo.gl/l6YMA