宗達、光琳、抱一

出光美術館へ「琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」展を見に行った。(http://goo.gl/w8mHf)
琳派は人気があるから、琳派をテーマとした展覧会は楽しいけれど、混んでいて疲れてしまうことが多い。今回の展覧会は、日曜日だったけれど、混みすぎていることがなく、ゆっくり絵を見ることができてよかった。
日本の場合、工芸、芸能の流派というと、狩野派のように流派の組織があり、師匠から弟子へ伝承されていくものが大部分である。琳派は、伝承のための組織がある訳ではなく、先人の絵に心惹かれた絵師たちが、彼らの絵に敬意を表して自らの意志で伝承していったところが特徴である。
狩野派は、その組織に参加している人は自らが狩野派の一員だと意識していたけれど、琳派はあくまでも後世の人が俵屋宗達尾形光琳酒井抱一に伝えられた伝統を見て、彼らを琳派だと呼んでいるものである。
芸能や工芸の流派は、初代が偉大で、伝承者は小粒になっていくことが多い。新しい流派を創設ということはよほどの人でなければできないし、それに比べれば伝承することは凡庸な人でもできるから、初代の師匠に比べて弟子たちが劣るのはしかたがないことかもしれない。
琳派の場合、師匠と弟子という関係で伝承された訳ではないけれど、やはり、始祖が偉大で、伝承されるにしたがってスケールが小さくなっているように思う。
琳派の始祖の俵屋宗達は、やはりスケールが大きいと思う。彼の絵を見ると、大胆にデフォルメされているため、不思議に感じることが多い。絵の中に登場するヒトやモノの大きさの比率がおかしかったり、緑色をべったり塗り込むことで山を表現したり、パースが狂っていたりする。これはゴーギャンのよう、これはキュビズムみたい、と思う。しかし、彼の絵には非常に強い印象がある。
酒井抱一は、俵屋宗達尾形光琳を尊敬していることは伝わってくる。また、絵も達者だと思う。しかし、俵屋宗達のように、うまく理解できないけれど、魅せられてしまうというような力はない。国際的で力強い桃山時代の雰囲気を持つ宗達と、繊細だけれども閉鎖的な江戸時代の雰囲気を持つ抱一の違いかもしれない。
宗達は金地の絵がいい。華やかな絵が金地に負けていない。しかし、抱一の金地の絵は、背景の華やかさに絵が負けてしまっているように見える。それに比べると抱一の銀地の絵は渋くていい。
宗達の代表作は、金地の「風神雷神図」(http://goo.gl/EIe2G)であり、抱一の代表作は銀地の「夏秋草図」なのである。