J.G.バラードの生涯と小説

J.G. バラードの「人生の奇跡 J.G.バラード自伝」 (http://goo.gl/fXFFy) と「楽園への疾走」 (http://goo.gl/7Yw6O) を読み終わった。今、「女たちのやさしさ」 (http://goo.gl/74zwI) に取りかかっている。
学校に通っている時、国語の授業で、小説を読むときには作者の言いたいことを読み解くことが教えられていた。
おそらく、この方法は古典的な文芸批評の考え方に基づいていたのだろうと思う。(http://goo.gl/EOipD). 古典的な文芸批評においては、批評家はすべての小説は作者が表現したいことを表現しており、小説を読むことはその作者の意図を読み解くことだと考えていた。彼らが小説を読むときには、作者がその小説を書いた動機を明らかにするために、作者の伝記や背景を調べる。
大学生になって、現代の文芸批評について知るようになった。現代の文芸批評においては、批評家は作者の意図ではなく、作者によって書かれたテキストそれ自体に着目する。批評家はテキストから作者を引き離し、独立した対象としてテキストを解釈する。
村上春樹は、自分の小説はいったん出版されてしまったあとは作者としての自分自身とは独立したもので、読者はそれぞれの好きなように読んでいいと語っている。おそらく、彼の考え方はこの現代の文芸批評に基づいているのだと思う。
私はたいてい小説を独立したテキストとして読み、作者が何を考えていたのかということは気にしない。自分の好きなように楽しんでいる。
しかし、J.G.バラードについては、彼の小説だけではなく、彼の生涯にも関心がある。代表作である「太陽の帝国」 (http://goo.gl/iUj0P) <なぜ絶版なんだ??>は自伝的小説であり、この小説のどこが事実でどこがフィクションなのか知りたいと思う。
彼は死の直前、自伝である「人生の奇跡」を書いた。この本から、彼の幻想的で悪夢的な小説も、第二次世界大戦中の上海で育った彼の悪夢のような子供の頃の体験が反映していることが分かった。
J.G.バラードは、彼の厳しい体験を受け入れ、それを小説に結晶させた。こんな時に彼の小説や自伝を読むと、彼と厳しい体験を共有できたような気持ちになって、癒されるのである。

人生の奇跡 J・G・バラード自伝 (キイ・ライブラリー)

人生の奇跡 J・G・バラード自伝 (キイ・ライブラリー)

楽園への疾走 (創元SF文庫)

楽園への疾走 (創元SF文庫)

女たちのやさしさ

女たちのやさしさ

太陽の帝国

太陽の帝国