ハブ空港

先週の夏休みに、ニューヨークとワシントンDCに旅行をした。
デルタ航空を利用して、ニューヨークまでは直行便、帰りはデトロイトでトランジットをして成田空港まで帰ってきた。
デルタ航空は、アトランタデトロイトハブ空港になっているようだ。デトロイトでは、真新しいデルタ航空専用のターミナルがあり、国内線も国際線も同じターミナルから発着するから、乗り換えが非常に便利である。さらに、ターミナルに直結したホテルがあり、ホテルの出口からそのまま搭乗手続きができるようになっている。
ワシントンDCには国内線用のナショナル空港と国際線用のダレス空港がある。ナショナル空港は市内からタクシーで15分ぐらいで行くことができる。トランジットがこれだけスムースだと、郊外のダレス空港まで行って直行便に乗るよりも、むしろ、ナショナル空港から乗って便利な空港でトランジットした方が快適かもしれない。
最近はあまり耳にしなくなったような気もするが、東アジアでのハブ空港の競争に負けるな、という話があった。ソウルの仁川空港や香港国際空港シンガポールチャンギ空港が東アジアのハブ空港として整備されており、日本の空港はそれに遅れをとっているから整備を進めるべきだ、という議論だったかと思う。
しかし、自分の国にハブ空港があることがどれだけメリットがあることなのかよく理解できない。確かに、巨大なハブ空港があればそれなりの雇用は生じるし、離発着料収入が増えるから、地域振興にならないこともない。しかし、ハブ空港があるからといって、その地域への訪問者が増えるということもないと思う。
今回使ったデトロイトデルタ航空のターミナルはすばらしく便利なハブ空港だが、便利すぎて乗り換える人はいても、デトロイトに訪問する人は特に増えないと思う。まして、ターミナルに直結するホテルまであり、乗り換えのために夜を過ごす場合でも市内に行く必要はまったくない。
ハブ空港は大規模でなければならないから、都市の近郊に整備することが難しいから郊外に整備されることになる。地元にハブ空港があれば、各都市への直行便が増えるというメリットがあるけれども、空港へのアクセスに時間がかかるようになるというデメリットもある。
ニューヨークにはやや郊外にあるケネディ国際空港とそれよりは都心に近い国内線用のラガーディア空港がある。ケネディ国際空港は混沌としていて使い勝手が悪いから、あれはあれで改良されればいいと思うけれど、ニューヨークにハブ空港がないからといって特に不便とは思わないし、また、だからと言ってニューヨークへの訪問者が減るとも思えない。
結局、その都市、地域への訪問者は、都市や地域自身の魅力に依存しており、ハブ空港の有無が理由になるとは思えない。香港やシンガポールへの訪問者が多いのは、ハブ空港を持っているからではなく、その都市自身の魅力に寄っているのだと思う。
日本には国際的なハブ空港となりうるだけの大規模な空港を建設する土地がない。羽田空港は国内線で手一杯で、国際的なハブ空港としては容量が足りない。成田空港や関西国際空港も規模が小さ過ぎで、ハブ空港にはとてもなりえない。でもそれで誰が困るのだろうか。
日本の地方都市へ仁川空港からの直行便が増えれば、その都市の住民は仁川空港を利用して海外のアクセスが良くなる。いわば、韓国の公共投資へただ乗りして利便性を高めている訳だから、むしろありがたいことではないだろうか。