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ヒップホップと作者の死

今日も英語版ウェブログ"Hip Hop and the Death of the Author"(http://murl.kz/McEyB)の翻訳である。

私は、1970年代はロックの黄金期であり、現在ではロックは死んでいると思っている。そのことは「世界のすべてのバカ男子のための歌」というエントリーに書いた。 (http://murl.kz/3Dw09)

現在では、ロック・ミュージックも現代の音楽じゃない。90年代にヒップホップが殺してしまった。ニルヴァーナが新しいロック・ミュージックを作っていた最後のバンドである。そして、ロック・ミュージシャンは基本的には昔のロック・ミュージックを再生している。だから、自分は主に60年代と70年代のロック・ミュージックを聴いている。

たまにヒップホップ・ミュージックに挑んでいたが、不思議な感じに聴こえてしまい慣れることができなかった。最近、ロックとヒップホップのどこが違うのかわかるようになったので、ヒップホップ・ミュージックを楽しめるようになった。

フランスの評論家のロラン・バルトは、「作者の死」という考え方について書いている。伝統的な文芸評論では、文学作品は常に作者と結び付けられていたけれど、バルトはテキストそのものを読むべきだと主張した。テキストは作者の創造物ではなく、個々のテキストはお互いに関連し合い、引用しあっている。

ロラン・バルトの理論は構造主義に基づいている。著名な人類学者であるクロード・レヴィ=ストロースは、構造主義の手法の手法を神話の研究に適用した。神話には作者はいない。だから、神話を作者に結びつけることはできない。レヴィ=ストロースは、神話のテキストのバリエーションに着目し、神話の意味と構造を明らかにした。

ヒップホップはポップ・ミュージック界に「作者の死」をもたらした。ロック・ミュージックでは、伝統的な文学批評のように扱われているけれど、ヒップホップ・ミュージックはむしろ神話に似ている。

ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を発表して以来、ロック・ミュージシャンはアルバムを作り、彼らによって創作された芸術作品と考えられている。

これに対してヒップホップ・ミュージックは、特定の作者による創造物ではない。ヒップホップが始まった時、DJはストリートで歌の断片をターンテーブルで流した。彼らはオリジナルの歌を作ったのではなく、すでに存在する歌を単に編集し、引用しただけだ。

カニエ・ウェストJay-Zの「オーティス」のビデオを見て欲しい。

伝説的なソウル・シンガーのオーティス・レディングの歌が引用されている。彼の歌声とシャウトが再構成され、カニエ・ウェストJay-Zのラップが重ねられている。

この「オーティス」という歌の作者は誰だろう?オーティス・レディングカニエ・ウェストJay-Z

作者のことは忘れて歌自体を楽しめばいいんだということがわかった。バルトはこの態度を「テキストの快楽」と呼んでいる。

ヒップホップ界では、実際に作者は死んでいる。