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東京都知事選挙「選挙公報」を読む:都知事をどうやって選ぶのか

東京都知事選挙選挙公報が我が家にも配達され、今、それを眺めている。
候補者が提出した版下をそのまま印刷しているのだろう、内容、レイアウトなど、有力候補、泡沫候補によって千差万別である(内容にある程度の制約はあるのだろうか、他の候補者の個人攻撃が書かれているものはない)。

  • 何を基準にして投票するか

脱原発」が東京都知事選挙の「争点」にふさわしくない、という議論がある。
しかし、候補者は何を主張してもよいはずだ。だから、選挙公報も基本的には各候補者が主張したいことを書いている。これはこれでよい。
一方、有権者も何を基準にして投票してもよい。ある候補者が「脱原発」を中心に主張をしたとして、それに共感して投票する人がいてもよいし、都知事選挙の選択基準にならないと思う人がいてもよい。

国政選挙では各政党が「マニフェスト」を提示して、政策が選択基準の中心にしようという動きがあった。特に、民主党が「マニフェスト」づくりに熱心で、政権を獲得した後、その「マニフェスト」の内容の多くが実現しなかったことで、「マニフェスト」中心の選挙という考え方自体が流行りではなくなっている。
当時の民主党政権担当能力を示したかったから、詳細かつ具体的な政策を列挙した気持ちもわからないではない。しかし、私は選挙は「政策」ではなく「人」を選ぶものだと思っている。当選した際の理念や目標は示してほしいとは思うけれど、詳細な政策、施策を提示することは意味がないと思っている。
状況は常に変化している。ある目標を達成するための手段は状況の変化に応じて臨機応変に変えなければならない。政治とは、そういった状況変化に適切に対応することが重要なので、あからじめ詳細に計画できる領域は主として官僚が担うべきで、政治の対象ではない。だから、詳細化しすぎた「マニフェスト」が破綻したのは、その意味で当然のことであった。

  • 私の投票の基準

私はだいたい二つの観点から投票する「人」を選ぶ。
ひとつめは、当選した際の理念、目標が自分の考えに近いか。ふたつめは、その理念、目標を実現できる能力がありそうか、ということである。

そうした観点から選挙公報を眺めている。
猪瀬前知事の突然の辞任による選挙で、候補者も準備期間が限られていたという事情もあるのかもしれないが、詳細な「マニフェスト」を示す候補者はなく、かなり漠然とした「願望」が中心になっている。
上にも書いたように、私自身、詳細な「マニフェスト」は不要と考えているが、しかし、あまりにも漠然としているため、それらの「願望」がその候補者が都知事になることで実行可能になるのかまるで判断できないものが多い。

脱原発」を主張するのはよい。しかし、当然ながら、都知事が決断すれば「脱原発」がすぐ実現する訳ではない。だから、少なくとも「脱原発」を実現に近づけるため都知事として何をするのか、ぐらいは書いてほしいと思う。例えば、電力の大消費地である東京都で省エネルギー政策を徹底して進める、とか。
脱原発」を主張する候補者は多いのだが、そういう意味で、都知事になった時に実行することを書いていたのは、ガスコンバインドサイクル発電所の都内建設推進に言及している「手書き」の候補者、松山親憲ぐらいである。

  • なぜ「東京」なのか

そして、この「脱原発」を含めて、主張の多くはなぜ「東京」なのか、ということがあまり深く考えられていないものが多い、という印象がある。その「スローガン」から都市の名前を「東京」から別の都市に入れ替えても違和感がない、きわめて一般的なものが多いのである。
例えば、舛添要一は「東京世界一。世界一の東京をめざし、やりとげる!!」と書いている。確かに、日本の中で「世界一」を目指せる都市は東京しかないだろうけれど、この東京という文字を、New York、London、香港、Singapore、上海に置き換えても違和感はない。
宇都宮健児の「キャッチフレーズ」は「くらしと経済、そして脱原発。希望のまち、東京へ。」だが、これはどんな「まち」にも当てはまってしまう。
そういう意味では、家入一真の「東京をぼくらの街に あなたはどんな東京にしたいですか?」という主張は嫌いではない。家入一真は、彼としての「東京像」を押し付けるのではなく、都民が自分で「東京像」を考えましょうと呼びかけている。真剣に東京のことを考えるようにまるで見えない他の候補者よりははるかによいと思う。

と、ここまで真面目なことを書いてしまった。
しかし、選挙公報泡沫候補の「香ばしい」主張を探すのが主な楽しみである。
マック赤坂は、どの選挙でも同じことを書いている。私は、彼の「教育革命」のなかの「奇人・変人を尊重し金太郎アメ教育を改める」という主張が、自分も奇人・変人のひとりであるので、非常に心強く感じる。
上にも書いたが、今回唯一手書きの松山親憲は、思いのほか内容は普通、まともである。最後の方になると字が小さく、行間が詰まってくるのがご愛嬌だが。
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しかし、なんといっても今回の選挙公報のなかでいちばん強烈だったのは、酒向英一の「このようなことができなければ、東京都は独立して一つの国家になるべきです。」そうかも。