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歳を取るのは楽しい:「青砥稿花紅彩画(白浪五人男)」の感想(1)

先週の日曜日、歌舞伎座で「青砥稿花紅彩画(白浪五人男)」を見た。いろいろな意味で堪能した。
会場で買った筋書き(「パンフレット」)に、過去に上演した白浪五人男の配役一覧表がついていて、私が以前に見た白浪五人男は昭和63年5月の歌舞伎座での公演だったことがわかった。このときは実に豪華な配役だった。弁天小僧が菊五郎、日本駄右衛門が幸四郎、南郷力丸が吉右衛門、忠信利平が左団次、赤星十三が福助(いまの梅玉)。この時期で白浪五人男を上演するならほぼ最高の役者が揃っている。
今回の配役は、菊之助染五郎松緑、亀三郎、七之助である。前回の上演が26年前だったから、今回はすっかり息子の世代の役者に入れ替わっている。
これは私自身の好みも多分に入っているけれど、菊五郎よりは菊之助のほうがよかったと思う。この時の菊五郎は45歳、現在の菊之助は36歳という年齢の差の問題もあったのかもしれないが、極楽寺山門の場での菊之助の立ち回りは身体がよく動いていて目を見張った。きれいな女形から伝法な盗賊に返信するところが弁天小僧の見せ場である。菊五郎はさすがに伝法さは様になっていた。しかし、菊之助の方が女形としてきれいであり、女形から盗賊への落差がより大きかったように思う。
吉右衛門の南郷力丸は堂々として立派な印象があったが、松緑の南郷力丸はもう少し若々しかった。菊之助松緑の組み合わせを見ていると、Bonnie and Clydeのような若くて明日のことは考えない、その意味で思慮が足りない無謀な二人という弁天小僧と南郷力丸が表現されていた。たしかにこの二人はそういうcoupleなんだと腑に落ちた。
日本駄右衛門は、幸四郎に比べると染五郎はやや線が細いように感じた。日本駄右衛門は弁天小僧の親の世代という設定だから、菊之助と年齢が近い染五郎ではなく、もう一つ上の世代の役者でもよかったかもしれない。
その当時の福助はきれいな女形だった。七之助はきれいというよりは個性的な女形だと思う。赤星十三はお小姓だから、その意味では七之助の方がはまり役だったかもしれない。福助だとお小姓ではなくて本当の女性のように見えてしまう。
私が歌舞伎を見始めた時には、梅幸辰之助歌右衛門はまだ活躍していた(白鸚の舞台は見たことがない)。だから、三世代の役者を見てきたことになる。
歌舞伎は良くも悪くも血筋で伝承されていくものだから、親子を比較するのも大きな楽しみの一つである。若いころ、梅幸歌右衛門の若いころはきれいですごかったという話を聞かされるにつけ、少々悔しい思いをしたものだった。しかし、私も歳を取り、現在の花形世代の父親たちの全盛期も自分の目で見て記憶に残っている。
歳を取るのもなかなか楽しいことである。