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ドナルド・トランプの対日政策

政治 雑感 新聞

定期的にブログを更新することにしたことをきっかけとして、「はてなダイアリー」から「はてなブログ」に移行しみた。さすがに同じ会社のサービスだから移行はかんたんでトラブルもなかったけれど、画面は多少なりとも読みやすくなっただろうか。

さて、ここからが今日の本題。

しばらく前、ニューヨーク・タイムズドナルド・トランプ外交政策に関するインタビューをした。そのインタビューをまとめた記事から日本に関する部分を抜粋して和訳してみる。

"Highlights From Our Interview With Donald Trump on Foreign Policy" By THE NEW YORK TIMES MARCH 26, 2016

On whether to allow Japan and South Korea to build their own nuclear arsenal:

問:日本と韓国が自ら核武装することを許容するか。

“It’s a position that at some point is something that we have to talk about, and if the United States keeps on its path, its current path of weakness, they’re going to want to have that anyway with or without me discussing it, because I don’t think they feel very secure in what’s going on with our country.”

答:アメリカと日本、韓国は、いずれ核武装に対する立場について話し合わなければならない。もし、アメリカが現在の弱腰の方針を続けるなら、日本と韓国は私と話しあったとしても、話しあわななくても、核武装を望むだろう。なぜなら、彼らは、わが国に起きていることに安心できないからだ。 

On whether he would withdraw United States forces from Japan and South Korea if those countries do not increase their payments to cover the costs of those troops:

問:日本と韓国が駐留米軍に関する費用負担を増やさないかぎり、米軍を撤退させるか。

“Yes, I would. I would not do so happily, but I would be willing to do it... We cannot afford to be losing vast amounts of billions of dollars on all of this... And I have a feeling that they’d up the ante very much. I think they would, and if they wouldn’t I would really have to say yes.”

答:そうだ。私はよろこんで米軍を駐留させているのではなく、撤退させることもためらわないだろう。われわれは駐留のための巨額の費用負担には耐えられない。日本、韓国は、費用負担を大幅に増やすべきだと考えている。日本と韓国は負担を増やすだろうし、もししなければ撤退に関して「イエス」と言わなければならない。 

On summing up his worldview as ‘America First’:

まとめると彼の世界観は「アメリカ最優先」である。

“I’m not isolationist, but I am ‘America First.’ So I like the expression... We have been disrespected, mocked, and ripped off for many, many years by people that were smarter, shrewder, tougher. We were the big bully, but we were not smartly led... The big stupid bully, and we were systematically ripped off by everybody. From China to Japan to South Korea to the Middle East... protecting Saudi Arabia and not being properly reimbursed... I mean they were making a billion dollars a day before the oil went down... The whole thing is preposterous... We will not be ripped off anymore, we’re going to be friendly with everybody, but we’re not going to be taken advantage of by anybody.”

 私は孤立主義者ではないが、「アメリカ最優先」の立場だ。「アメリカ最優先」という表現を気に入っている…われわれは、ずる賢いタフな人たちに、ずっと軽視され、嘲笑され、搾取されてきた。われわれは大きないじめっ子だった、賢いリーダーではなく…大きな愚かないじめっ子で、みなからシステマティックに搾取されてきた。中国から日本、韓国、中東…サウジアラビアを防衛し、それにふさわしく報われてこなかった…原油価格が下がる前、彼らは毎日百億ドルも稼いできた。これらすべては不合理だ…われわれはもう搾取されないし、誰に対してもいい顔をすることはしない。誰にも利用されたりはしない。

 いまはあまり耳にしなくなった言葉だけれども、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の外交政策の立場、いわゆる「ネオコン」と、ドナルド・トランプの「アメリカ最優先」の立場は対照的だ。「ネオコン」はアメリカ流の民主主義を世界に広めることを目指す、アメリカ的な理想主義的な立場だった。もちろん、アメリカ流の民主主義を「押し付けられる」側からの反発もあったし、また、目的のために手段を選ばないことも多かったから、他国からは「理想主義」には見えないことも多かったけれど。

一方、 オバマ大統領は、核廃絶などの高邁な理想を掲げ、グアンタナモ収容所での拷問を否定するなど目的のために手段を選ばないことは正当化しない。しかし、実際の外交政策は「ネオコン」に比べると現実的に見える。イラクアフガニスタンから撤退し、シリアに深入りすることを避ける。ロシアを非難し、経済制裁をしつつも、妥協するところは妥協する。

アメリカにとって中東の重要な同盟国だったサウジアラビアの反対、反発にもかかわらず、長年敵国とみなしてきたイランと接近した。アメリカ軍の庇護下にあったサウジアラビアは、これまで自ら軍事力を行使することはなかった。しかし、アメリカにイランへの接近と同時期に、国境を接するイエメンでイランに支援されている勢力に対して自ら空爆を実施した。これを東アジアに置き換えると、日本の頭越しにアメリカと中国が接近するようなことを想像すればよいだろう。尖閣諸島で紛争が発生し、日本が自ら軍事力を行使する状況に似ているかもしれない。

ドナルド・トランプの主張は、世界にとって必ずしも望ましいものではないが、一貫性はある。「ネオコン」と比べて、むしろオバマ大統領の外交政策に近いように思う。オバマ大統領は大きな理想を掲げているが、実際の行動は「アメリカ最優先」に近い。ドナルド・トランプは、大きな理想を掲げず、ストレートに「アメリカ最優先」と主張するところが異なるが、方向性は似ている。少なくとも、中東政策については、オバマ大統領とあまり変わらないのではないか。

アメリカの庇護のもとにあった日本にとって、ドナルド・トランプの指摘は厳しいものである。中国にとっても、日本から米軍が撤退し、独自の核武装をするのは悪夢だろう。そのような厳しい主張をぶつけ、日本から駐留経費負担増額を引き出す、というのは、交渉の手段として賢いとは思う。

ドナルド・トランプが大統領になるとしても、ならないとしても、アメリカの外交政策の大きな流れとしては、アメリカはより「アメリカ最優先」的になり、日本に負担を求める方向になるだろう。ドナルド・トランプの主張は極端だけれども、リスクマネジメントのためには、米軍撤退、日本核武装という想定も必要だと思う。