ファン冥利に尽きる:今シーズンのヤンキース

今シーズンのヤンキースの振り返り

ワイルドカードプレーオフを逆転で勝ち、地区シリーズを2敗から3連勝で逆転した。これからリーグチャンピオンシップシリーズが始まる。今シーズンのヤンキースには、もう、十分以上楽しませてもらっているが、さらにシーズンは続く。
昨シーズンの中盤にアレックス・ロドリゲスが引退を表明して以来、若手中心にメンバーを一新した。有望なプロスペクトたちが集まっていたから、これからしばらくは若手の成長を見るのが楽しみだ、数年後にはワールド・シリーズに手が届くかもしれない、と期待していた。それが、もう、今シーズン、若手が開花し、まだヤンキースの今シーズンは続いている。まさにファン冥利に尽きる。
ヤンキースPodcastを定期的に聴いているが、特に印象的だったのは、キャンプ期間中のイベントでのファンとキャッシュマシGMの質疑応答の中継だった。ファンはみな興奮しており、口を揃えて質問の冒頭にこのオフのキャッシュマシの仕事を賞賛、感謝していた。
確かに、アレックス・ロドリゲスとの10年契約は大きな負の遺産だったが、その後のチームの刷新は見事だった。そして、若手を育てながら勝利に結びつけたジラルディ監督の采配もすばらしかった。
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主力メンバーの交代

昨シーズンの開幕戦と今年のワイルドカードプレーオフのスターティングラインナップを比較してみる。まさに、別のチームのようである。
昨シーズンはクリーンアップは、1970年代生まれが2人に、1980年生まれが1人。今シーズンは、2番に最強打者を置く現代風のラインナップで、クリーンアップという概念が当てはまらない。そして、2番から6番まで1990年代生まれがならんでいる。特に、1992年生まれの三人、アーロン・ジャッジ、ゲイリー・サンチェス、グレッグ・バードは、コア・フォー(デレク・ジーターマリアーノ・リベラアンディ・ペティット、ホルヘ・ポサーダ)に並ぶ存在となることが約束されている。

2016/4/5開幕戦
打順 選手 守備位置 生年
1 Jacoby Ellsbury CF 1983
2 Aaron Hicks LF 1989
3 Alex Rodriguez DH 1975
4 Mark Teixeira 1B 1980
5 Carlos Beltrán RF 1977
6 Brian McCann C 1984
7 Chase Headley 3B 1984
8 Starlin Castro 2B 1990
9 Didi Gregorius SS 1990
2017/10/3ワイルドカードプレーオフ
打順 選手 守備位置 生年
1 Brett Gardner LF 1983
2 Aaron Judge RF 1992
3 Gary Sánchez C 1992
4 Didi Gregorius SS 1990
5 Starlin Castro 2B 1990
6 Greg Bird 1B 1992
7 Aaron Hicks CF 1989
8 Jacoby Ellsbury DH 1983
9 Todd Frazier 3B 1986

Wall Street Journal のこの記事によると、チーム内の雰囲気も大きく変わっているらしい。かつてはキャンプジーターが率いる厳しく、ある意味「ビジネスライク」な雰囲気もあったが、いまではジーターの影響は一掃されて野球を楽しむ雰囲気になっているという。テレビを通じて見ても、若い選手が楽しそうにしている様子はわかる。ジラルディ監督も、この変化を肯定しているという。
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ベテランの価値

1992年生まれの三人はまばゆい輝きを放っている。しかし、ベテランもうまく噛み合っている。
地区シリーズ第5戦、2対1で迎えた9回表、インディアンズのクローザー、コーディ・アレンに対し、トッド・フレイジャーがファールで粘ってフォアボールを選び、ブレット・ガードナーもさらに粘って、最後はタイムリーヒットを打った。この二人の重要な場面での粘りに、ベテランの価値を見ることができた。
コア・フォーが若手時代にも、ポール・オニール、ティノ・マルチネスといったベテランが渋い働きをしていた。それを思い出させる場面だった。

データに基づく野球の革新

昨シーズンぐらいから、MLBでデータに基づく野球の革新が急速に進んでいるように思う。
新旧ラインアップの比較のところでも書いたが、すでに4番に最強打者を据えるクリーンアップという考え方は過去のものとなっている。
角度をつけたフライを打ち上げることが有利だとするフライボールレボリューションは、ヤンキースの打線にも大きな影響を与えている。アーロン・ジャッジはフライを打ち上げることでホームランを量産しているが、ブレット・ガードナーやディディ・グレゴリウスもフライボールレボリューションの影響でホームランが増えていると思う。
田中将大がシーズン中、ホームランをかなり打たれたのは、逆にフライボールレボリューションに対応しきれていなかったように見えた。以前のように、低めにボールを集めればよいという時代は過ぎ去った。
シーズン最終登板とプレーオフではすばらしいピッチングをしており、対応方法を見出したのではないかと期待したい。また、プレーオフでの投球は、集中力も高く、日本での最後の年を思い出した。サバシアも安定しており、セベリーノもいいピッチングをした。田中も安定すれば、アストロズとも十分戦えるだろう。