2014-02-01から1ヶ月間の記事一覧

透明な好い心地

夏目漱石の随筆「硝子戸の中」に、旧友について書かれた一節のなかに、こんなことが書いてある。 私が高等学校にいた頃、比較的親しく交際った友達の中にOという人がいた。その時分から余り多くの朋友を持たなかった私には、自然Oと往来を繁くするような傾向…

歳を取るのは楽しい:「青砥稿花紅彩画(白浪五人男)」の感想(1)

先週の日曜日、歌舞伎座で「青砥稿花紅彩画(白浪五人男)」を見た。いろいろな意味で堪能した。 会場で買った筋書き(「パンフレット」)に、過去に上演した白浪五人男の配役一覧表がついていて、私が以前に見た白浪五人男は昭和63年5月の歌舞伎座での公演…

「建国記念の日」にふさわしい日はいつか

「建国記念の日 悠久の歴史に思い馳せよ」という産経新聞の社説(http://goo.gl/Sxou7c)を読み、あいかわらず産経新聞の主張は「右翼」の観点からみても浅いと思った。 このblogで再三繰り返しているように、私は佐幕派であり共和主義者だから産経新聞のよう…

「純文学」と「エンターテイメント」:佐村河内守名義の新垣隆と新垣隆名義の新垣隆

佐村河内守事件について音楽関係者からいくつかの論評がでてきた。 伊藤乾「偽ベートーベン事件の論評は間違いだらけ」(http://goo.gl/0S6Pxs) 森下唯「より正しい物語を得た音楽はより幸せである〜佐村河内守(新垣隆)騒動について〜」(http://goo.gl/vt3w…

「牛は超然として押していくのです。」

おそらく漱石の書簡のなかでも最も有名なもののひとつだから、改めて私が引用するまでもないのだけれども、書き写してみたいので引用しようと思う。 漱石没年の1916年、当時まさに新進気鋭の作家だった芥川龍之介、久米正雄に送られた書簡である。 拝啓。『…

人間の弱さについて:佐村河内守と藤村新一の事例

佐村河内守の代作者だったという新垣隆の記者会見があった。(http://goo.gl/LtVncX) この記者会見の内容に対する佐村河内氏側からの発表がないから、どこまでが事実なのか断定することは難しいけれど、事件の輪郭がある程度わかってきた。 この記者会見の記…

「余は余一人で行く所まで行って、行き尽いた所で斃れるのである。」

最近、時事的な文章ばかりを書いていて、いささか食傷してしまった。 世間離れをしたくなり「漱石書簡集」を読み返してみた。 心を打たれたところはいろいろあるのだが、今日は、狩野亨吉宛の手紙の一節を紹介したい。 その当時、新設だった京都帝国大学文科…