地震

仮設住宅の凍える冬

日本語ではこの気持をうまく表現できない気がして英語で書いたけれど、書き上げてから、やっぱり日本語でも伝えたいと思い、和訳してみたら、やっぱり翻訳調の日本語になってしまった。 "A Freezing Winter in Temporary Housing" ( http://yagian.blogspot.…

福島第一原子力発電所事故に関する個人的総括

東日本大震災から2年が経過して、福島第一原子力発電所事故に関するさまざまな調査結果、書籍などが発刊された。3月11日以来、集中的にそれらの本を読んでみた。その印象を簡単にまとめたいと思う。 いちばん説得力があると思ったのは、国会東京電力福島原子…

Fukushima 50と非国民

福島第一原子力発電所の事故の直後、アメリカでは発電所の事故拡大を防ぐために発電所にとどまった東京電力の職員たちをFukushima 50と呼び、その英雄的な行動を報道していたという(http://goo.gl/6xP3e)。 なぜFukushima 50がアメリカで報道された理由につ…

電力自由化と停電リスク

現在、すべての原子力発電所の稼働が停止している。関西電力圏内を中心に夏季のピーク時期には電力不足が懸念されているが、現時点では停電が起きている訳ではない。 世界的に見れば、電力需要の増加に発電施設の増設が追いつかなかったり、送発電施設の更新…

日本と保守主義

東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以来、民主主義ということについて断続的に考えている。その一環として、エドマンド・バーク「フランス革命の省察」を読んだ。今日はその感想について書きたいと思う。 これも以前から何回か書いているけれど、私の…

竹森俊平「国策民営の罠」

竹森俊平「国策民営の罠」を読んだ。 竹森俊平は「世界デフレは三度来る」を読んで以来(id:yagian:20080917:1221647196)、まっとうな学者だなと思い、基本的には信頼している。この「国策民営の罠」は、福島第一原子力発電所の事故に際して、なぜこのような…

暗い話を聞きたいが 笑って聞いていいのかな

以前もこのテーマについて書いたことがあるけれど、うつ病の人に「がんばれ」と言ってはいけないとよく聞く。 うつ病者としての私の立場から言えば、「がんばれ」という言葉をかけてくれる人は元気づけようを思って言ってくれているということはよくわかるか…

「市場の倫理 統治の倫理」

1. ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」 ジェイン・ジェイコブス「市場の倫理 統治の倫理」を読了した。 3.11以降、民主主義について考えて続けているけれど、いろいろと示唆に富む内容だった。 この本のエッセンスを強引に要約するとこんな風…

ブラック・スワン、リーマン・ショック、福島第一原子力発電所事故

今日のテーマの「ブラック・スワン」といっても映画の方ではなく、きわめて稀に起こる事象の方である。 かつて「金融工学」が非常に話題を集めた時期があった。リーマン・ショック以降あまりこの言葉を耳にしない。もちろん、話題にならないということだけで…

原典にあたる必要性:「冷温停止状態」と原子力安全委員会

野田首相が福島第一原子力発電所の「冷温停止状態」を宣言したというニュースを見た(「首相、原発事故収束を宣言 「冷温停止状態を確認」」朝日新聞ウェブサイト 2011年12月16日23時59分(http://goo.gl/qYJkz))。 「冷温停止状態」という用語については、専…

衰退かファシズムか第三の道か

山口定「ファシズム」を読んだ。これまでファシズム研究についての体系的な知識がなかったから、自分のなかで見取り図を作る上で有益な読書だった。 いまさらファシズムについての本を読んでいるのは、このウェブログでもこのところずっと書き続けているよう…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(4)民主制の実現と定着

トクヴィル「アメリカのデモクラシー」を素材にしてアメリカと日本の民主制について書いてきた。 「De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)」 (id:yagian:20110828:1314498545) 「De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(2) 地方分権とティ…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(3) 上滑りの民主化

3.11をきっかけにして日本の民主主義について考えている。このエントリーは、アメリカに旅行しながらトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」を読みながら考えた以下の二つのエントリーの続編である。もし、時間があったら目を通して欲しい(少々長いけれど)…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)

アメリカ旅行中にトクヴィル「アメリカのデモクラシー」を読んでいた。実に興味深い本だった。もっと早く読んでおけばよかったとも思ったが、アメリカ旅行中に読むというのもいいタイミングだったかもしれない。 トクヴィルはフランスの政治学者で、「アメリ…

個人の自立と民主主義

最近、福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、なぜ、日本の原子力行政が暴走してしまったのか、また、暴走を止めることができなかったのか、ということを考えている。 以前のエントリー(日本語版「日本は民主主義国家なのか」 (id:yagian:20110628:13092…

原子力開発と核武装

日本の原子力開発は核武装を目的としたものなのだろうか、ということを長年の疑問に思っていた。 実は日本は核武装を目指しているのではないか、という状況証拠はあり、実際に海外から疑惑の目で見られてきた。 日本の原子力開発は、高速増殖炉を中心とした…

日本は民主主義国家なのか

日本は本当に民主主義国なのだろうか。 形式的に言えば、日本には憲法があり、憲法に規定された議会があり、国会議員は国民が選挙で選び、議会の多数派から総理大臣が選ばれ、与党から大臣を選び、大臣が官庁をコントロールする、という制度になっている。国…

「原子力村」の解体

吉岡斉「原子力の社会史」 吉岡斉「原子力の社会史」という本を読んだ。科学史家がまとめた日本の原子力開発の詳細な歴史である。実に興味深く、勉強になる。残念なことに絶版になっており、図書館で予約してようやく借りることができた。 もんじゅの事故と…

沖縄の人は歴史を背負っている

伊波普猷の「古琉球」を読んだ。 近世以降の沖縄は苦難の歴史の連続で、沖縄の人たちは必然的に重い歴史を背負っている。 以前、沖縄出身の人と心霊スポットについて話をしていたときに、その人が軽い調子で「沖縄って戦争があったから心霊スポットが多いん…

村上春樹のカタルーニャ国際賞スピーチと原子力発電

村上春樹のカタルーニャ国際賞のスピーチ「非現実的な夢想家として」を読んだ(http://goo.gl/jQFu9)。 私の現時点での原子力発電所への考えについて「原子力発電所について」(id:yagian:20110606:1307308292)についてに書いた。村上春樹も私も結論としては原…

原子力発電について

最近はこの日本語版ウェブログと英語版ウェブログ(http://goo.gl/J3DhM)を隔日で書いている。今日は日本語版を書く日ではないのだが、昨日「NHKスペシャル シリーズ原発危機 第1回「事故はなぜ深刻化したのか」「ETV特集「続報 放射能汚染地図」」を見て、原…

三陸海岸大津波

つれあいが買った吉村昭「三陸海岸大津波」を読んだ。過去、三陸海岸を襲った明治二十九年、昭和八年、チリ地震津波について、過去の証言を丹念に集めた作品である。 今回の大震災と津波の直後は品切れになっていたようだが、今は増刷されて入手可能になって…

総理大臣の仕事

浜岡原子力発電所への運転停止要請について次のようなツィートがあった。 @ToruTAKAGI: 菅首相の浜岡全停止要請、正しい決断だ。原子力政策を安全委や安全保安院に任せてきた結果、原発が爆発した。彼らが全くアテにならないことが明らかになったのだから、…

場当たり的対応

もうすでに各所でさまざまな批判がされているから屋上屋を架すことになるけれど、一昨日の記事に書いたこと(id:yagian:20110505:1304578609)と関係が深いので、いちおう書いておこうと思う。 福島第一原子力発電所の事故への対策について、内閣官房参与を辞…

日本的組織とリーダーシップ

まず、この文章を読んでいただきたい。 それに加えて大地震に対する日本政府の危機処理能力は、信じがたいほどお粗末なものだった。彼らは驚愕に文字通り立ちすくみ、敏速で適切な対処をすることに失敗した。いくつかの国から派遣申し込みのあった救助チーム…

インドから日本への仏教の旅

一昨日、日本人の持つ無常観や諦観についての記事(id:yagian:20110502:1304285422)を書いた。 それに対して次のようなツィートがあった。 @kamechiyosaburo: @yagian 諸行無常の感覚や諦念ですが、「諸行無常といい、そして神を持たず、なおかつ虚無感に走ら…

J. G. バラードと強迫観念

J. G. バラードの「人生の奇跡」「太陽の帝国」「女たちのやさしさ」を読み終えた。 「人生の奇跡」は遺作となった自伝であり、「太陽の帝国」と「女な血のやさしさ」は自伝的小説である。 バラードは1930年に上海の租界で生まれた。租界は、事実上の帝国主…

福島第一原子力発電所事故の教訓を国際的に共有すべき

REAL-JAPAN.ORGというウェブサイトで勝間和代が「原発事故への提言 − リスクがリスクを招かないようにしたい」という文章を書いていた。(http://goo.gl/eW4FS) 以下は、勝間和代の文章に対するコメントである。 今回の福島第一原子力発電所の事故を契機に考…

あなたのような人にしか東京は救えないのです。

ニューヨークタイムで、村上春樹の短編「かえるくん、東京を救う」と今回の地震に関する批評を読んだ。(” Super-Frog” By JOEL LOVELL March 22, 2011 http://goo.gl/ZiS6k) 「かえるくん、地球を救う」は、1995年の阪神淡路大震災をテーマにした短篇集「神…

J.G.バラードの生涯と小説

J.G. バラードの「人生の奇跡 J.G.バラード自伝」 (http://goo.gl/fXFFy) と「楽園への疾走」 (http://goo.gl/7Yw6O) を読み終わった。今、「女たちのやさしさ」 (http://goo.gl/74zwI) に取りかかっている。 学校に通っている時、国語の授業で、小説を読む…