時事

原典にあたる必要性:「冷温停止状態」と原子力安全委員会

野田首相が福島第一原子力発電所の「冷温停止状態」を宣言したというニュースを見た(「首相、原発事故収束を宣言 「冷温停止状態を確認」」朝日新聞ウェブサイト 2011年12月16日23時59分(http://goo.gl/qYJkz))。 「冷温停止状態」という用語については、専…

これがマルキストの生きる道

アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート「マルチチュード」を読んだ。おもしろかった。 アントニオ・ネグリは、現代において最大の影響力を持っているマルキストだと思う。私自身は、ハイエクに共感する保守主義者だけれども、マルクスは19世紀最大の思想家…

フーコーと山口組

重田園江「ミシェル・フーコー」を読んだ。 フーコーの「監獄の誕生」を中心として、筆者のフーコー理解について述べた本である。新書版でさまざまな哲学者、思想家に関する入門書が出版されているが、この本は入門書という気持ちで読み始めると期待が裏切ら…

まともに考えよう:TPP交渉参加問題と民主主義

昨日の夜のTVニュースで経団連と全農の会長がTPP交渉への参加問題についてまったく噛み合わない会話をしている映像を見ていやな気持ちになった。 私自身はTPP参加がさほどの問題とも思わないし、さっさと参加すればいいと思っているから、立場としては経団連…

TPP交渉参加問題とサブガバメント(2)

朝、ゴルフスクールに行く前の時間、「サンデー・モーニング」という番組をぼんやり見ていたら、金子勝があんまりな暴論を吐いていたので、大宅映子が思わず割り込んでいた。 金子勝は、TPPの交渉に参加すると日本は必ずアメリカの交渉力に負けてアメリカに…

TPP交渉参加問題とサブガバメント

TPP交渉参加問題が取りざたされているけれど、論理的に交渉参加に反対する論拠がどこにあるのかよくわからない。 最近目にした議論でいちばん説得的だと思ったのは山崎元氏のこのツイートである。 @yamagen_jp: TPPについては、輸出のメリット、農業のデメ…

ごちゃごちゃ感覚

最近、箭内道彦「サラリーマン合気道」を読んだ。なかなか刺激的な本でだった。 もともと自己啓発系、ライフハック系の本はあまり興味がなかったのだけれども、心が弱っていたとき(うつ病で会社を長期休暇していた)に、スティーブン・コビー「7つの習慣」…

衰退かファシズムか第三の道か

山口定「ファシズム」を読んだ。これまでファシズム研究についての体系的な知識がなかったから、自分のなかで見取り図を作る上で有益な読書だった。 いまさらファシズムについての本を読んでいるのは、このウェブログでもこのところずっと書き続けているよう…

ひとりじゃない

最近、日本語でウェブログを何を書くべきか迷っている、ということをよく書いている。逆に言えば、英語でウェブログを書くことには迷いがなく、楽しいということと裏腹でもある。英語でウェブログを書くことの楽しみについて具体的に書いてみようと思う。 31…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(4)民主制の実現と定着

トクヴィル「アメリカのデモクラシー」を素材にしてアメリカと日本の民主制について書いてきた。 「De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)」 (id:yagian:20110828:1314498545) 「De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(2) 地方分権とティ…

Intermission

最近では、日本語のウェブログと英語のウェブログ(http://goo.gl/J3DhM)を隔日で書いている。 今日は英語のウェブログの日で、午前中に"It's the End of the Ozawa Era and Time to build New Japanese Democracy."というエントリーを書いた。"En Route" (ht…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(3) 上滑りの民主化

3.11をきっかけにして日本の民主主義について考えている。このエントリーは、アメリカに旅行しながらトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」を読みながら考えた以下の二つのエントリーの続編である。もし、時間があったら目を通して欲しい(少々長いけれど)…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)(2) 地方分権とティーパーティー運動

「De la Democratie en Japon(日本のでデモクラシー)」(id:yagian:20110828:1314498545)の続きです。 トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」を読んでいると、奇妙に感じられるアメリカの現象の背景が理解できて腑に落ちることが多い。また、一方で、アメリ…

De la Democratie en Japon(日本のデモクラシー)

アメリカ旅行中にトクヴィル「アメリカのデモクラシー」を読んでいた。実に興味深い本だった。もっと早く読んでおけばよかったとも思ったが、アメリカ旅行中に読むというのもいいタイミングだったかもしれない。 トクヴィルはフランスの政治学者で、「アメリ…

アメリカのIT事情

夏休みが終わり、今日から会社が始まる。 休みの間、一週間ほどニューヨークとワシントンDCに行ってきた。 海外を旅行しても、現地の人と知り合うような機会はあまりないし、観光地や観光客向けのレストランや店を巡っていると、観光客ばかりを目にして、実…

行方不明になります

明日から来週いっぱい夏休みです。例年は夏休みは一週間だけど、節電とかなんとかで二日おまけが付いて、木曜日から休みになりました。 とはいえ、二日分の仕事をどこかで圧縮しなければいけないので、このところかえって忙しくなり、それはそれで大変でした…

上滑りの開化

しばらく前、会社の人たちと飲みに行った。そのとき、隣合わせになった私とほぼ同世代の人が、自分は大学時代哲学科にいたんですよ、と言った。私自身は文化人類学科の出身だけれども、私の会社では彼も私も変わり種だと思う。バブルの時代の大学生活の思い…

民主主義の学校

つれあいが日本経済新聞の夕刊にある最終面のコラムを紹介してくれた。竹内洋が書いている「戦後日本のカリスマ思想4:吉本隆明 下町知識人同時代と伴走」(2011/07/28(木)夕刊18面)である。 私が最近丸山眞男を読んでいて、このコラムのなかでは吉本隆明と…

モバイル・デバイスとプライベートとパブリック

「MacとThinkPad」(id:yagian:20110717:1310855282)のなかで、会社のPCをデスクトップからノートに代えて、持ち歩きができるようになったら、家で仕事をするようになってしまったという話を書いた。 うつ病になる以前、いちばん仕事をしていた時期は、デスク…

個人の自立と民主主義

最近、福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、なぜ、日本の原子力行政が暴走してしまったのか、また、暴走を止めることができなかったのか、ということを考えている。 以前のエントリー(日本語版「日本は民主主義国家なのか」 (id:yagian:20110628:13092…

ストレス・テストのストレス

菅直人総理大臣を引き摺り下ろそうとしている民主党内の勢力にはあまり共感ができなかったし、いまでもできないけれど、これほどまでに政府の意思が統一されず、いきあたりばったりの発言、施策が続いていると、さすがに総理大臣を変えたほうがいいのではな…

タコ社長とドラゴンとスーパー・クール・ビズ

裏の印刷工場の社長をやっているオヤジとしてはおもしろい人だけど、うっかり責任のある役職についてしまったばっかりに残念なことになってしまった人を「タコ社長」と呼んでいる。 今回、復興担当大臣を辞任した松本・ドラゴン・龍を見ていると、この人って…

原子力開発と核武装

日本の原子力開発は核武装を目的としたものなのだろうか、ということを長年の疑問に思っていた。 実は日本は核武装を目指しているのではないか、という状況証拠はあり、実際に海外から疑惑の目で見られてきた。 日本の原子力開発は、高速増殖炉を中心とした…

日本は民主主義国家なのか

日本は本当に民主主義国なのだろうか。 形式的に言えば、日本には憲法があり、憲法に規定された議会があり、国会議員は国民が選挙で選び、議会の多数派から総理大臣が選ばれ、与党から大臣を選び、大臣が官庁をコントロールする、という制度になっている。国…

日本語で書くということ、英語で書くということ

稲本がハルバースタムのことを書いていたが(id:info-d:20110625)、確かに、ハルバースタムとかボブ・ウッドワード、カポーティの「冷血」を取り上げてもいいかもしれないが、アメリカのジャーナリズムと日本のジャーナリズムには大きな差を感じてしまう。 文…

「原子力村」の解体

吉岡斉「原子力の社会史」 吉岡斉「原子力の社会史」という本を読んだ。科学史家がまとめた日本の原子力開発の詳細な歴史である。実に興味深く、勉強になる。残念なことに絶版になっており、図書館で予約してようやく借りることができた。 もんじゅの事故と…

どこまで説明するか

「原子力発電について」(id:yagian:20110606:1307308292)というエントリーを書いた。 いきなり原子力発電を安楽死させろという結論だけ書いても賛否両論になると思うけれど、エントリーの文章の筋道を追って考えれば、普通の人は同意してくれるんじゃないか…

核兵器と倫理

下の記事で、村上春樹のカタルーニャ国際賞のスピーチでの被爆国としての日本における原子力発電の位置づけに違和感を感じたことを書いた。具体的に言えば、被爆国としての日本の倫理と原子力発電を結びつけることに納得がいかなかったということだ。 しかし…

村上春樹のカタルーニャ国際賞スピーチと原子力発電

村上春樹のカタルーニャ国際賞のスピーチ「非現実的な夢想家として」を読んだ(http://goo.gl/jQFu9)。 私の現時点での原子力発電所への考えについて「原子力発電所について」(id:yagian:20110606:1307308292)についてに書いた。村上春樹も私も結論としては原…

昭和と平成、大政翼賛会と大連立

しばらく前のエントリー「菅直人、小沢一郎、鳩山由紀夫」(id:yagian:20110605:1307218940)で今回の政局について感想をかいた。また、政治に関する話を書こうと思う。 昭和初期と現代の類似性が指摘されることがある。 大恐慌、金融危機から深刻な不況、停滞…