中国を見る視点

今回のミサイルの発射で北朝鮮をめぐって、さまざまなことが語られている。しかし、時事的な文章ばかりを追っかけても、ことがらの本質を理解することはむずかしいだろう。私は、北朝鮮のことを考える時には、古田博司の本を読み返して、時事的な情報と照らし合わせてみることにしている。
最近、加藤徹という人の本を続けて二冊読んだ。「漢文の素養」(光文社新書 ISBN:4334033423)と「貝と羊の中国人」(新潮社新書 ISBN:4106101696)である。非常に面白かった。これから、中国のことを考える際に、基礎となるような本を書いてくれそうだ。
「貝と羊の中国人」にこんな一節があった。

 ……日中友好の未来は、日本の態度だけで決まるものではない。もし、ロシアが軍事的脅威として復活したら。もし、朝鮮半島が統一に成功して、高句麗の旧領土の割譲を中国に要求したら。もし、インドと中国の国境問題が再燃したら―。
 そのどれか一つが実現しただけでも、日中関係は、劇的に好転するであろう。
 日中関係は、常に、中国と周辺国の関係のなかで、見てゆく必要がある。

中国にとっても、北朝鮮は思うに任せないことが多い国なのだろうけれども、存続してもらいたいと思っているのだろう。北朝鮮との国境近くの中国側には、多くの「朝鮮族」が住んでいる地域がある。北朝鮮が混乱して、多くの難民がこの地域に流れ込んできたり、北朝鮮と韓国が統一して、国内の朝鮮族に分離独立の機運が高まるのは絶対避けたいのだろう。そう考えると、中国は、とにかく現状維持を目指した行動をとるのだろう。