アニキ

朝、NHK−BSで、松井秀喜の第一打席のホームランを見てから、家を出た。
そのホームランは、打球の鋭さだけではなく、打席全体のプロセスもすばらしかった。
はじめて対戦するルーキーのピッチャーのボールをじっくりとみて、1ボール、1ストライクのカウントになった。その次の投球は、外角高めでボールくさかったけれど、ストライクを取られて1ボール、2ストライクに追いつめられた。けれども、あわてることはまったくない。
空振りをしてもおかしくないようなきわどいボールを二つファールで逃れ、ボールを二つ選んでフルカウントになる。そこに内角へのあまいボールが来て、ライトスタンドへの完璧のホームランを打った。
決して、偶然ホームランになったのではなく、しっかりボールを選んで、打てる球が来るまで待つことができている。次の打席でもフルカウントからフォアボールを選んでいる。
復帰第一戦、松井が最初の打席に入るとき、ヤンキースタジアムではスタンディングオベーションが起こった。松井秀喜は、ヤンキースのファンに好かれる、チームに献身する勝負強い職人タイプの選手で、これまでもヤンキースの選手として受け入れられてきたと思う。ニューヨークのファンに受け入れられるというのは、決してたやすいことではない。松井秀喜と違って、アレックス・ロドリゲスは、いまだ、真のヤンキースの選手として受け入れられているとはいえないし、これからも、受け入れられることはないだろう。そして、松井秀喜は、この怪我からの復帰によって、ファンのなかで、一段階ステップアップしより高い存在として認められたような印象がある。これでポストシーズンで印象に残る活躍ができれば、かつてのポール・オニールのような、ヤンキースのスピリットを代表するような存在になれるかもしれない。
我が家では、デレク・ジーターを「アニキ」と呼んでいる。松井がいいプレーをすると、NHK−BSでは、なぜか、ベンチにいるジーター「アニキ」の顔のクローズアップが映し出される。テレビのなかのジーター「アニキ」は、もう、完璧なまでの「アニキ」笑顔を満面に浮かべているのである。我が家では、その「アニキ」笑顔が、あまりにも完璧すぎて、ついつい笑ってしまう。ジーター「アニキ」、最高です。