もう、ちょー冬じゃん

ピンポン (1) (Big spirits comics special)

ピンポン (1) (Big spirits comics special)

冷たい風が吹き抜ける歩道を、コートの襟を立て、マフラーを掻き寄せ、背中を丸めて歩いていたら、すれ違った若い女の子が「もう、ちょー冬じゃん」というのを聞いた。たしかに、「ちょー冬」だよなぁと思った。
「ちょー冬」という表現は、実感がこもっていて、気持ちがよく伝わってきたけれど、ちょっと不思議なところがある。「ちょー」という言葉は、強調の副詞で、たいてい形容詞、形容動詞、動詞に付き、名詞には付かない。例えば、「ちょー寒い」という「ちょー」+形容詞の表現には不自然ではないが、「ちょーケイタイ」のように「ちょー」+名詞という表現は成り立たない。
しかし、「ちょー冬」はありだと思う。「ちょー夏」もいけそうだ。しかし、「ちょー春」や「ちょー秋」は不自然である。「ちょー冬」は、「ちょー寒い」とか「ちょー寒い季節」という気持ちを表現しているのだろう。「冬」や「夏」という名詞には、「寒い」や「暑い」といった形容詞的な含意があり、そのため、「ちょー冬」「ちょー夏」という表現がなりたっているのだろう。
「ピンポン」のなかで、ペコが「あつがなついぜ」という。これも、よく気持ちが伝わってくる表現だ。「暑い」という言葉と「夏」という言葉が重ね合わされていて、暑さが強調されている。
他に「ちょー」が付く名詞はあるだだろうか。「ちょー雨」「ちょー雪」というのはありうるような気もする(このあたりの語感はよくわからないので、わかる人に訊きたいところである)。「ちょー雨」は、「ちょー」が「雨」にかかっているのか、それとも、「ちょー雨(が降ってる)」の「降ってる」が省略された形なのだろうか。
「ちょー」と似た「すごく」という副詞のケースを考えてみると、「すごく雨」というのはやや舌足らずという印象がある。「すごく雨が降ってる」か、もしくは、「すごい雨」という形容詞を用いるのが普通だと思う。
などとだらだらと考えを進めてきたけれど、何せ日本語学の知識がないので、どんどんわけがわからなくなってしまいそうなので、今日はここまで。