心の糖尿病

今日は、精神科の外来に行ってきた。どういうわけか、ここのところ外来に行く日に限って調子が悪くなる。行って帰って来るだけですっかり疲れて、しばらく昼寝をしてしまう。
うつ病心の風邪」という標語がある。たしかに、こじらせる前に医者にかかった方がいいという意味ではうなづける言葉だけれども、うつ病患者の実感としては「風邪」に例えるのはしっくりこない。むしろ、「うつ病は心の糖尿病」とでも言った方がいいと思う。
風邪のような感染症は、感染、発症、治癒のプロセスが明確だけれども、うつ病ではいつ発症し、どのようになったら治癒したといえるのかという基準がはっきりしない。気分が落ち込み、集中力が失われ、倦怠感、無力感におそわれるということや、精神的な調子のリズムは、健康な人にも多かれ少なかれあるだろう。長期間にわたって通勤できなくなるという状態にまでなればうつ病だということははっきりするけれど、中間的な段階ではどこで線を引くべきか難しい。強いて言えば、本人がうつ病だと思えばうつ病ということになるのだろう。
逆に、どうなったらうつ病から治癒したといえるかもはっきりしないのではないかと思う。精神的な調子のリズムがまったくなくなるとは思えないし、ある程度は気分が落ち込むということもあるだろう。社会生活に支障が生じない程度に精神の調子の波をコントロールできるようになれば、いちおう「治癒」したということにするしかないのではないか。その意味では、インシュリンで血糖値をコントロールしている糖尿病患者に似ていると思う。
今、どの薬をどの程度飲めば調子が上がるか、薬の種類、量を変えながら見極めようとしている。しかし、これがなかなか難しい。気持ちの調子に関わる因子、変数が多すぎて、どこまでが薬の効果なのか、その他の因子なのかを見極めるのが難しい。ある薬の量を増やしても調子が落ちてしまったりする。その薬の効果がないのか、その薬をやめるともっと落ち込んでしまうかがわからない。薬をまったく飲まない時期を作れば薬の効果ははっきりするかもしれないけれど、さすがに落ち込みすぎるのが怖くてそんなことはできない。
いろいろな意味で面倒で、治療には時間がかかり、手を切るのが難しそうな病気ではある。