禁句

うつ病患者に対して「がんばって」というのは禁句、ということはかなり浸透しているようで、正面切って「がんばって」と励まされることはほとんどない。
うつ病になりたての頃は「がんばることができない自分」にいらだっていたから「がんばって」と励まされると逆切れしていたかもしれないけれど、今は「がんばることができない自分」にすっかり慣れてしまったから「がんばって」と励まされても、「それはうつ病患者へは禁句ですよ」と冗談で切り返すぐらいのことはできるようになっている。
それよりも、未だに慣れることができないのは、その日の調子を聞かれることだ。その日の調子によってできること、できないことが違うから、相手としてもその日の私の調子が知りたいということは理解できる。なるべく正直にその日の調子を伝えようと思うのだが、調子が悪いと答えるとどうしても相手ががっかりするのがわかる。私の方もがっかりされるのはうれしくないから、ついつい調子がいいと答えて、調子がよいふりをしてしまったりする。そうすると、家に帰ってきてからがっくりと疲れてしまい、ペースが狂ってしまう。
ほんとうに調子がよい時、調子がよいと答えると、たいてい相手がよろこぶ。しかし、自分としては、あくまでも一つの波として調子がいいだけで、病気そのものがよくなっているわけではないから、また調子が下がることもある、ということがわかっているだけに、ぬか喜びをさせてしまっているような気分になる。
最近では、調子のよしあしで一喜一憂しないようにと言うようにしている。それでも、相手の表情や言葉の調子を見ると一喜一憂しているのがわかってしまうのが辛い所である。