環境を建設的に考えるには

ABCのニュース番組のポッドキャストを聞いていたら、The Earth Liberation Frontという団体(http://www.earthliberationfront.com/)が、シアトル郊外の高級住宅地の連続放火事件の容疑がかけられているというニュースがあった。ABCのウェブサイトでニュースの詳細(http://abcnews.go.com/TheLaw/story?id=4379154&page=1)を読むと、放火現場にこの団体のイニシャルと「グリーンな建築、いや、ブラックだ (Built Green? Nope black!)」というペイントが残されていたという。放火された住宅地は、環境にやさしい(environmentally friendly)ことが売り物になっていたという。私は環境保全はあくまでも人間の生活の向上のためにあると考えているから、環境保全を目的にして放火することは肯定しない。しかし、自然の豊かな地域にたてられた広大な邸宅を「環境にやさしい」という名目で売り出すのは偽善的だと思う。
Sea Shepherd(http://www.seashepherd.org/)が、日本の捕鯨船日進丸を妨害する活動を続けている。絶滅する可能性が高い種を捕獲することを禁じることについては国際的な合意ができていると思うけれど、そうではない種の生物を捕獲することを禁じることは、国際的な合意はないし、これからも合意できないだろう。乱獲によって絶滅の恐れがあるアフリカ象の狩猟を禁じることには国際的な合意が得られているが、ヒンズー教徒が牛を食用と禁じることを国際的に強制することはできない。その意味で、Sea Shepherdの主張には根拠が乏しいと思う。しかし、国際問題において、孤立を恐れずに原理原則に基づいて主張することが少ない日本が、この捕鯨の問題に限ってはこれほどまでに頑なのはなぜだろうか。洞爺湖サミットで環境問題について主張するのであれば、原理原則は別にして捕鯨問題を解決しておくことに意義はあると思う。また、Sea Shepherdも、捕鯨反対の活動をするぐらいだったら、経済的な問題で野生生物保護が不十分になっている発展途上国の支援を行った方が建設的だと思う。
地球温暖化は、「問題」という視点から論じられることが多いが、寒冷化よりは温暖化の方がメリットを受ける地域が多いように思える。豪雪地帯で積雪が減れば、観光でのデメリットはあるかもしれないけれど、生活面ではプラスが大きいはずだ。北海道の稲作農家は温暖化が進行してコシヒカリの作付けが可能になれば大きなメリットを得るだろう。一定の地球温暖化を許容し、それを最大限に活用することで、地球温暖化のデメリットを受ける地域への対策を行う方が、国際政治の政争の具として扱われるよりは建設的だと思う。
といっても、化石燃料の消費量が無制限に増えるのは、資源の枯渇の側面からも好ましくない。快適な生活環境を維持できる範囲で省エネルギーに取り組むべきだなどと、人ごとのように書いているが、今季から入れた床暖房が快適すぎてもうこれなしの生活は考えられないけれど、ガスの使用量はぐっと増えてしまった。こんなことでは、省エネルギーなんて偉そうに書けない。