文化人類学と経営学

連休明けからの職場復帰は、短時間勤務からスタートすることになった。まだけだるさが残っているから、最初は目標は低く、会社に毎日通勤することから始めようと思う。今日は通勤の練習も兼ねて、池袋まで往復徒歩で買物に行った。これぐらい歩くと、家についた後しばらく昼寝をしたくなる。
このところ職場復帰に向けて、経営学の本をぱらぱらと読んでいる。経営学という学問の有り様は、実学を志向していることを別とすると、ちょっと文化人類学に似ていると思った。
文化人類学は、さまざまな民族の文化について記述した民族誌を基礎として、文化の多様性を明らかにしてきた。社会的に最も大きな影響を与えた成果としては、諸文化を進化の順に整理しようとした社会進化論を否定したことだと思う。しかし、それぞれの文化を詳細に調査するほど、諸文化を統一的に説明する法則、理論から遠ざかって行った。そのような文化人類学のなかで、唯一ある程度の普遍性を持っている理論は、レヴィ=ストロースの構造人類学だろう。もし彼がいなければ、文化人類学はそれぞれに興味深いものの共通性に乏しい民族誌の単なる集積となっただろう。
経営学の本を読み始めた当初、経営学は成功した企業のケーススタディとそれから抽出した教訓の集積という印象を受けた。しかし、ポーターの「競争の戦略」を読み、文化人類学レヴィ=ストロースによって民族誌の集積以上のものになったように、経営学ケーススタディの集積以上のサイエンスでもあることが理解できた。経済学では完全競争を理想的状態とし、そこから逸脱した状況として市場の失敗について論じる。しかし、企業の利潤を高めるという観点からは見ると完全競争は利潤が限りなく0に近くなり、理想状態とは言えない。ポーターは経済学の市場の失敗の理論を裏返しにして、企業にとって利潤を高めうる業界の状況、経済学的に言えば市場の失敗、について理論的に研究をした。一方、文化人類学民族誌にもとづいて社会進化論を否定したように、経営学においても、ミンツバーグはケーススタディにもとづいて、経営学の安易なサイエンス化を批判している。
まだ経営学についての全体像を語れるほどに読書が進んだ訳ではないけれど、ポーターとミンツバーグを読めば、経営学に対するバランスのとれた見方はできるようになると思う。

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