新聞の片隅から(6)貧しさ

日経新聞の一面を読んでいたら、こんな記事があった。

 クイズをひとつ。中間層の世帯の半数には使用人がいる。車をもつ世帯の一割にはお抱え運転手。さて、この国はどこですか。
 答えはインド。今は五千万人程度の中間層は向こう七年で二億ー三億人に増えるという。博報堂の調査によれば年収はたかだか百万ルピー(約二百万円)。日本なら課税最低限以下だが、日本の中間層よりも生活スタイルは豊かだ。
日本経済新聞朝刊 2008年10月30日 1面「世界この先 序章 壊れゆく常識4」

この記事では、インドの中間層は使用人を雇っているから、日本の中間層よりも生活スタイルが豊かであると書いている。そんなはずがあるわけない。
私の亡くなった祖母は、料理を作るのが嫌いで、あまり作っていなかったという。彼女の長男が結婚してからは、お嫁さんが食事を作っていたようだが、それ以前はどうしていたのか不思議に思っていた。
祖父、祖母が住んでいた家に、物置になっていた暗い小さな部屋があった。話を聞いてみると、そこは以前、住み込みの小使いさんのための部屋だったという。つまり、祖父、祖母の一家は、昔は使用人を雇っていたということになる。
祖父、祖母の家の生活レベルが、今の私の両親や私自身に比べて高い、ということはまったくない。中間層ではあったと思うが、けっしてそれ以上ではない。いわゆる庶民の暮らしである。その当時は、日本もインドのように、中間層でも家に使用人を雇っていたのがそれほど不思議ではなかった。
では、なぜ、中間層でも使用人を雇っていたのか。それは、非常に貧しい人が多く、極端に安い賃金で使用人になっていたからだ。おそらく、住み込みの小使いさんは、たいしたお給金をもらっていなかったと思う。それでも、生まれ育った家が貧しかったから、三食食べれて、寝る所に不自由しないという条件があれば、雇われていたのだろう。
今、インドの中間層に使用人がいるのもまったく同じ事情だと思う。安く雇われる貧しい人が多いからだろう。これから、インドの経済発展が進み、中間層が拡大すれば、中間層が使用人を雇う比率も減っていくに違いない。