読書メモ:W・チャン・キム、レネ・モボルニュ「ブルー・オーシャン戦略」

題名だけを見て、際物のビジネス書かと思って敬遠していたのだが、フランス発のビジネス書というところに興味を惹かれ、また、「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力 ビジネス思考法の基本と実践」でも推薦していたので、読んでみることにしてみた。
この本では、競争にさらされている市場をレッド・オーシャンと、未知の市場空間をブルー・オーシャンと呼び、競争を避け、高い利益を上げるために、ブルー・オーシャンに乗り出すための戦略について論じている。マイケル・ポーターのような理論的な洗練には欠けているけれど、参考となる知見はちりばめられていると思う。
特に参考になったのは、成功した製品、サービスの戦略は、すべての要素について高いレベルを求めるのではなく、メリハリが利いていることが重要だという指摘である。顧客はすべての要素に対して高い要求を持っているわけではなく、また、すべての要素を高水準にすることで高コストになってしまう。だから、重点に絞ったメリハリのある戦略を立案し、そのメリハリのつけ方に独自性があれば、ブルー・オーシャンを切り開くことができるという。
メリハリのある戦略を立案するために、「四つのアクション」という手法を提示している。

●Q1:業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か
●Q2:業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か
●Q3:業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
●Q4:業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か

この「四つのアクション」は、ブルー・オーシャン戦略だけではなく、ブレイン・ストーミングや発想法にも適用可能だと思う。普通、付け加えることには頭が回るけれど、取り除いたり、減らしたりすることにはなかなか思いつかない。その意味で、なかなか有効な手法だと思う。
もうひとつ興味深かったのは、ブルー・オーシャン戦略は社会的構築主義の影響を受けているということである。マイケル・ポーターは業界構造を所与のものとして考え、そのなかでの企業戦略について理論的に考察をした。
このブルー・オーシャン戦略では、業界や市場というものは各企業の立場から構築可能なものであり、だからこそ、まったく新しい市場であるブルー・オーシャンを企業が見出すことができるとしている。思想や社会学の潮流と経営学も無関係ではないらしい。その点が、フランス発の経営学の理論の特色ということなのかもしれない。

競争の戦略

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