レスラー

ミッキー・ロークがビッグカムバックを果たした映画「レスラー」を観た。
全盛期から20年経った元スターのプロレスラーランディがミッキー・ロークの役所である。今は落ちぶれてトレーラーハウスに一人で暮らしていて、スーパーマーケットで働きながら、週末は地方の小さな会場でプロレスをしている。身体はぼろぼろで、薬漬けになっている。そんな彼が試合後に心臓発作におそわれる。手術は成功するが、医者にはプロレスから引退するように言われる。彼は一度は引退を決意するが、結局は命の危険があることを知りながらリングに戻ってきてしまう。
プロレス界のバックステージものとして興味深かったが、それよりも、せつない映画という印象を受けた。どうしても、このランディと三沢光晴と重ねあわせて観てしまい、彼らが捕われていた運命の過酷さがせつなかった。
プロレスラーは、ライトの下観衆の声援を受ける喜びのために、身体を文字通りすり減らす。それは、死に至ることもある。
最近はすっかりプロレス観戦から離れてしまったけれど、この「レスラー」を観た後、そして、三沢光晴の死を知ってしまった後、単純に娯楽としてプロレスを楽しんでみることはもうできないのではないかと思う。レスラーたちの身体や人生のことを考えると、そのプロレスを楽しむことに罪悪感を感じないわけにはいかない。
しかし、レスラーたちは、観衆が純粋に楽しみ、声援をすることを求めている。そして、そのために命をかけながら試合をしている。
「レスラー」という映画と三沢光晴の死によって、プロレスという世界がなんなのか考えさせられてしまった。
映画そのものをプロレス界として独立して観たとしても、十分いい映画だったと思う。ミッキー・ロークのランディ役は、彼自身の人生と重なりあい、はまり役という言葉はこのためにあるようだったし、プロレスの場面もリアルだった。そして、ヒロインのマリサ・トメイもあっぱれなストリッパー役ぶりだった。登場人物のすべてが味わう人生の苦みが心に残った。