抗鬱剤と脳内物質

うつ病と診断されてから4年ほど経つ。その間、定期的に通院して、いくつかの抗鬱剤を服用してきた。効果を見ながら、薬の種類や量を調節している。最終的には量を減らしていって、服用せずに済むようになることが目的である。それにはまだしばらく時間がかかりそうだが。
今週の木曜日に通院し、抗鬱剤の種類を変えた。それまでは、アモキサンジェイゾロフトという抗鬱剤ユーロジンという睡眠導入剤を飲んでいた。このうち、アモキサンテトラミドという抗鬱剤に入れ替えた。
抗鬱剤は、うつ病に対して効果があったという実感がなかなかわかなくてもどかしい。しかし、薬によってははっきりした副作用があって、身体と精神に影響をもたらすことはわかる。口の渇きや便秘などは、慣れてしまえばさほど気にならない。水を口に含んだり、便秘薬を併用すればいいし、いまでは、特に対策はしていないけれど、問題はない。
抗鬱剤にはいくつか種類がある(http://goo.gl/yGRQ)が、そのなかで三環系と呼ばれているグループのものが比較的副作用も強いような印象がある。このグループのうちの抗鬱剤のひとつを試していた時、寝言がひどくなったり、歩いていて足元がおぼつかなくなったりして、神経に影響があることを実感した。それで、うつ病の症状が軽減されればいいけれど、副作用ばかりが感じらたので、主治医と相談して薬を変えてもらったことがある。
この種の脳の活動に影響を及ぼす薬は怖いなと思った。また、人間の精神活動のかなりの部分が、脳内物質のバランスで成り立っており、それに対して物理的な変化をもたらすことで影響を及ぼすことができることが実感できた。
うつ病になると、わけもなく落ち込んだり、はしゃいだり情動の起伏が激しくなる。もちろん、健康なときでも、ある程度そのような波はある。おそらく脳の機能はきわめてデリケートな脳内物質のバランスの上に成り立っていて、ちょっとしたショックでそのバランスが崩れ、情動の波が生じるのだろうと思う。それは、人間関係や社会的なショックの場合もあるだろうけれど、ホルモンバランスなどの身体的な原因や、偶然起こる化学的なアンバランスが原因となることもあるのだろうと思う。そして、抗鬱剤に代表される精神に影響を与える薬剤も、こうした脳内物質のバランスに影響を与える。
いくつかの抗鬱剤を試す、いわば人体実験を行い、おそらく私のうつ病にはジェイゾロフトが相性がいいことが分かってきた。最近は、ジェイゾロフトを飲みつつ、調子が下がれば増量し、調子がよくなれば減量するということを続けていた。
ここ最近、ちょっと興奮し、ハイな状態が続いていた。仕事の関係でトラブルがあり、その対処に追われて忙しくなっていた。その仕事をこなすためにはハイになる必要もあり、また、いい意味での興奮状態に入っていた。
しかし、そのハイな状態がやや行き過ぎていたように思われるようになった。夜、不眠状態になり、午前3時に目が覚め、インターネットで丸山眞男の堅い論文の要約をウェブログにまとめ、通勤時間には英語のポッドキャストを聴き、会社に7時半には出勤し、仕事をしている。夜はそれなりの時間まで働き、RSSリーダーウェブログに加え、日本とアメリカの新聞記事をチェックしている。明らかに、正常な状態ではない。
ハイであること自体は問題ではないのだが、経験上、その状態が続くと、反動で落ち込みが深くなることが分かっている。この状態からハードランディングすることを避け、ソフトランディングさせたいと考えた。
そのことを診察の時に訴えたところ、アモキサンテトラミドに変えることを薦められた。テトラミドは副作用に睡眠を持続する効果があるという。逆に、その副作用を活用して、睡眠剤として利用されることもあるという。今回、ハイな状態で不眠の症状がでているから、睡眠導入剤ユーロジンに合わせてテトラミドを睡眠前に飲むことにした。
まだ、テトラミドに切り替えて二晩しか寝ていないけれど、たしかに早朝覚醒することはなくなり、6時過ぎまで寝ていられるようになった。日中も心なしか過剰なハイな状態ではなく、落ち着くようになってきたように思う。
仕事のトラブルもそれなりに収束しはじめており、ハイパーな精神状態で対処しなければならない状況ではなくなってきた。当面、テトラミドを飲み、熟睡しつつ、落ち着いた状態にソフトランディングしたいと思う。
これからしばらく、ウェブログTwitterの更新頻度が下がるかもしれないけれど、それはそれで適当な状態に収まってきたと思ってほしい。