古典的箱根旅行

勤続20周年で会社からもらった旅行券を利用するため、つれあいの誕生祝いも兼ねて、月曜日に有給休暇をとり日曜日、月曜日の二日間で箱根まで温泉旅行に行ってきた。
箱根にはずいぶん行っているけれど、今回は久しぶりに古典的なルートの箱根旅行をしてきた。
子供の頃、祖父の会社の保養所が箱根にあり、あまりはっきり覚えていないけれど何回か行っていたようだ。海賊船に乗った記憶がうっすらとある。
それからしばらくは箱根に行っていなかったが、大学生になって実家で自動車を買ってからは、ドライブで箱根にはよく行った。箱根新道やターンパイクを駆け上がり、箱根の外輪山を走っていた。
社会人になってしばらくすると、御殿場にアウトレットショップができ、東名で御殿場まで行き、アウトレットショップに寄って、仙石原を抜け、ハイランドホテルか富士屋ホテルに寄ってお茶をして、小田原厚木道路、東名経由で帰ってくるのが定番になった。そのほかにも、伊豆の温泉に行った帰りにアウトレットショップまで足をのばすこともあった。
自動車を手放してからは、箱根への旅行の仕方が子供時代の頃に戻って、ロマンスカーで箱根湯本に行って、箱根登山鉄道に乗るというパターンになった。
前回箱根に行った時は、うつ病で会社を長期休暇していた間に気分転換をしようと思って強羅の温泉に行った。けれども、温泉に着くだけで疲れてしまい、寝床にもぐりこんで休んでいた。翌日も、観光する気力がなく、まっすぐ帰宅することになってしまった。
今回は、その時の復讐というか、箱根観光のゴールデンコースを完走することにした。
小田急箱根フリーパスを購入し、ロマンスカーで箱根湯本へ。箱根湯本を歩き、手打ち蕎麦屋で昼食を食べた。箱根湯本の駅に戻って箱根登山鉄道に乗り、強羅に行く。強羅の温泉旅館で一泊した。
翌日、強羅からケーブルカーに乗って早雲山へ。そこからロープウェイに乗り、桃源台に着く。元箱根まで海賊船に乗る。山のホテルで昼食を食べ、箱根神社に参拝して、バスで箱根湯本に戻り、ロマンスカーで新宿に帰ってきた。今回は、元気に完走することができた。
長い時間をかけて練り上げた観光コースだけあって、いろいろな乗り物を次々と乗り継いで飽きさせず、接続もスムーズで快適である。定番中の定番だけれども、やっぱり楽しんでしまった。
今回、「箱根散歩マップ」という本を買って、少し歩いてみようかと思った。自動車の旅行だとなかなか歩かなくなってしまうけれど、電車の旅行では歩く楽しみがある。
箱根湯本の駅から、早雲寺、白山神社、箱根観音、玉簾神社をめぐるコースを歩いた。「散歩マップ」という言葉で、軽いぶらぶら歩きを想定していたけれど、想像以上にアップダウンが激しく、特に、湯本富士屋ホテルの脇から早雲公園に向かって登る坂道は、息切れして、ダウンジャケットの内側が熱くなってしまうほどだった。
それまで箱根湯本というと、乗り換えの時間つぶしに駅前の商店街を歩いたことがあるぐらいだった。すぐ裏に山があることも意外だったし、めぐったお寺や神社も趣があった。坂道を登った甲斐はあったと思う。
早雲寺は北条早雲の遺言で息子の北条氏綱が創建したという禅寺。後北条氏五代の墓がある。禅寺らしく、隅々まで掃除が行き届いていて、凛とした雰囲気のあるいいお寺だった。名残の紅葉が二枚だけ、掃除されずに踏み石の上に落ちていた。(以下、写真はつれあいの撮影)


須雲川に沿ってしばらく登って行くと、江戸時代の旧街道の石畳が残されているという細い道がある。元箱根のあたりの旧街道は立派な杉並木があるけれど、この道は、誰も歩く人おらず、狭くて、かつての箱根八里の山道の風情が想像できる。は落ち葉が積もっていて歩きにくかったが、昔の人も苦労して歩いたのだろう。ここを大名行列が、馬や駕籠や多くの荷物を運ぶのは大変だったと思う。

箱根には九頭龍伝説があり、水にまつわる伝説や神々が多くあるようだ。天成院という大きな温泉旅館の裏の敷地に、飛烟の滝、玉簾の滝、玉簾神社があり、自由に入れるようになっている。飛烟の滝、玉簾の滝は、それぞれがご神体になっていて、原初的な神道の姿が残されているように思う。たしかに、水の流れや岩の姿が立派で、ご神体とされたのも納得できる。

帰り道は川沿いの平坦な道を戻って箱根湯本駅に戻って箱根登山鉄道で強羅まで行く。もう紅葉は終わってしまっていて残念だと思うけれど、紅葉の時期はきれいだったろうと思う。
強羅駅から予約していた旅館まで歩いて行く。チェックインの時間が3時で、ちょうどその時間に到着した。夕食は6時からということにして、ざっと館内を探検する。
温泉旅館には珍しく、フィットネスルームとプールがあったので、夕食のごちそうに備えてプールで1,000mほど泳いでから、温泉に入ることにする。
泊まりの旅行や出張の時には、必ずスイミングウェアを持っていくようにしていて、プールがあるとすかさず泳ぐことにしている。今は海外出張がないポジションにいるけれど、以前、海外出張があった時期には、水泳が時差ぼけ解消に効くということを聞き、少々疑いながらも泳ぐようにしていた。時差ぼけ解消の効果がなかったとしても、長時間飛行機の狭い椅子に閉じ込められていたあとに、水泳するのは気持ちがいい。
温泉旅館で水泳をしようなどという酔狂な人はあまりいないのだろう、プールは独占状態だった。狭いプールだったけれど、ひとりきりで泳ぐのは自由な感じがしていい気分である。
箱根の温泉は、あっさりしたお湯だけれども、身体が暖まるような気がする。部屋に戻り、しばらくゆっくりしていると、夕食の時間になる。個室でゆっくりと食事ができるという日本の温泉旅館のスタイルは贅沢だと思う。食事自体もおいしかったけれど、リラックスして食事を楽しめることがいい。
いつもはいろいろ忙しかったりするけれど、つれあいとゆっくり話をすることができて良かった。いつも、年末のつれあいの誕生祝いの食事の時に、今年のまとめと来年への抱負の話をするのだけれども、今回は来年の抱負が具体的になった。つれあいによると、去年はなんとか会社に通えればいい、という抱負だったという。それに比べれば、前向きになれたと思う。
勤続20周年の記念に、つれあいからボールペンを贈ってもらった(私自身がこれが欲しいとしてしたものなので、サプライズではなかった)。旅館につれあいの誕生日のことを伝えてあったので、記念のキャンドルがでてきた。
温泉に行くといつもの早寝してしまうが、今回も、山道を歩き、プールで泳ぎ、アルコールも入って、布団もふかふかで、早々に寝てしまった。
翌朝、早起きをして温泉に入り、朝食を食べる。11時のチェックアウト時間のぎりぎりまで、庭を散歩したり、ラウンジでコーヒーを飲んだりしてまったりと過ごす。結局、チェックイン時間直後に旅館に到着し、ぎりぎりの時間まで粘ってチェックアウトした。久しぶりにのんびりと過ごせたように思う。
強羅の駅からケーブルカーに乗り早雲山に登る。ロープウェイに乗り換えて、大涌谷を越えて桃源台に行く。今日は天気が良く、富士山がきれいに見ることができた。何回見ても、富士山が見えるとなにかラッキーな気持ちになってしまう。

前回の箱根旅行で乗れなかった海賊船に乗る。海賊船は、たぶん、子どもの頃以来だと思うから、三十年以上のブランクがあると思う。乗り場はずいぶんきれいになっていたけれど、船自体は昔の記憶とあまり変わっていなかった。元箱根の港に到着する前に、富士山がきれいに見えた。岸辺に立てられたホテルを見るのも楽しい。

元箱根から山のホテルまで送迎バスに乗る。岸辺に立てられたサロン・ド・テ ロザージュというカフェで、ランチセットを食べる。日本旅館で和食を食べた後だったから、洋食らしい洋食がおいしかった。湖面がきらきらと輝いているのをなんともなく見ているのも心地いい。
最後に、箱根神社に参拝する。芦ノ湖から九頭龍が登ってこられるという設定なのか、湖に鳥居があり、そこからまっすぐ山の方へ参道が延びている。参道の両側に、老木が鬱蒼としげっていて、境内に入ると木に囲まれた気持ちのいい空間がある。いい神社だと思う。

二日間だったけれど、盛りだくさんだった。その割には、旅館ではゆっくり過ごせた。前回のことを考えると、ずいぶん元気になれたと思い、それも収穫だった。

箱根散歩マップ

箱根散歩マップ