日本相撲協会と八百長

日本相撲協会八百長問題で揺れている。放駒理事長は、疑惑が完全に解明されるまでは場所を開催しないと宣言したから、春場所はもちろん、夏場所も開催できないのではないかと言われている。
これまでも、大相撲で八百長が行われているという報道はあったし、内容も説得力があったから、八百長が行われているのだろうとは思っていた。だから、今回の報道にも驚きはない。また、大相撲で八百長が行われていること自体は、さほどの問題だとは思わない。自分が真剣な大相撲ファンではないからかもしれないけれど。
問題は、日本相撲協会公益法人であるにはダーティー過ぎることだと思う。八百長以外にも、暴力団との関係、非合法な賭博との関わり、薬物汚染などが明らかになった。今はまだ表面化していないけれど、水面下のお金の流れがあるはずだから、もし、税務調査が入ったらただでは済まないと思う。一私企業が相撲の興業をしているのであれば、八百長をしても問題ではない。プロレスと同じである。しかし、さまざまな優遇措置を受けている公益法人八百長はないと宣言して興業をしながら、実際は八百長が横行していたとなると話は別である。
プロレスだったら問題はないと書いたが、アメリカ最大のプロレス団体であるWWEは、プロレスがスポーツではなくエンターテイメントであると宣言している。これは、WWEが株式を公開している企業であり、株主に対して自らのビジネスを説明する責任があるからである。私企業でもこのような責任が生じることがあるのだから、公益法人はさらに重い説明責任があるだろう。
日本相撲協会のさまざまな問題は、その古い体質のままに公益法人になったことにある。ここ10年ぐらいの間で、社会全般でコンプライアンス意識が大幅に高くなった。建設業界の談合、暴力団との癒着などさまざまな面で、グレーな部分が明るみにされ、改革が進んできた。しかし、日本相撲協会は、改革ができなかった。部屋制度を含めて、解体的出直しをしない限り、問題は解決しないだろう。しかし、親方が理事長、理事を勤める現在の体制ではそのような改革は難しいように思える。最悪、日本相撲協会が解散することもありうると思う。
また、八百長問題は、興業に対しても大きな影響を与えると思う。多くのファンは、八百長があることはうすうす知っていたと思う。しかし、そのことと、明確に八百長があることを示されることとは大きな差がある。
私はプロレスファンだから同じような経験をしている。当時、日本のトップレスラーだった高田延彦ヒクソン・グレイシーと真剣勝負をして無残に二連敗したことがある。プロレスが真剣勝負だと信じていた訳ではないけれど、プロレスラーは道場では真剣勝負の練習をしていて、実際には強いという幻想は持っていた。この試合の結果、それが完全に否定されてしまった。
日本のプロレス業界は、この試合をきっかけとして、明らかに衰退してしまった。割りきってプロレスはプロレスとして楽しめばいいのだけれども、やはり、どこかしらけてしい、今までのような気持ちではプロレスを見ることができない。
大相撲も、八百長疑惑を完全に払拭しない限り(それは非常に困難だと思う)、観客は大幅に減るだろう。また、TVでスポーツとして扱われず、中継もされなくなるだろう。そうなれば、組織、興業の規模を大幅に縮小し、限られた熱心なファンを相手にした興業をすることになるだろう。
今まで、大相撲は、スポーツと伝統芸能とエンターテイメントの狭間にあり、あいまいな存在だった。将来は、伝統芸能として存続するしかないのではないかと思う。その方が、むしろ相撲らしさが残されるかもしれないとも思う。